コバヤシ

ミッドサマー ディレクターズカット版のコバヤシのレビュー・感想・評価

4.5
 ネタバレも何も、怖い人間はこんなアプリ開くな。

 筋は単調。言おうと思えば20文字にも満たない内容。その分映像にとても時間をかけているのが見える作品だった。
 例えばスウェーデンに行く行かないでダニーとクリスチャンが揉めるシーン。鏡に映る虚像を使ったツーショットで長尺を回すが、初めは互いの顔が写っているのに揉めてからは2人の顔が映らない。気持ちの向いあっていない様を映像で表している。
 クリスチャンにマヤのことを狭い部屋で訪ねるシーン。固定してカメラが回るが画面右端には覗くのにちょうど良い高さの小さな穴。左端にはやたら暗い暖炉。何か変化が起きるのでは、と我々の目線が散ってしまう姿はクリスチャンの緊張と同化して感じさせられる。
 芸術作品として撮られている映画なので頼むから何も知らない状態で見てほしい。

 私的解釈的で言えばダニーは救われたと見ている。
 人についてずっと泣き通していたダニーの笑顔を最後に映すのは、苦悩の消失を象徴している。ペレの言うところであった“本当の家族”を獲得した証である。
 わかってくれない、救ってくれない人ばかりで苦しんでいたダニーだが彼らはどう迎えたかと言うと“同調”なのだ。
 ペレはダニーの心情を理解したのではなく、「僕も両親をなくした」という“同調”のみで説得をする。ダニーが行為を見てしまって泣き叫んでいる時にはたくさんの女性が声を上げて泣いてみせる。付和雷同とはいうが本当に怖いのは同調されることに感じてしまう。

 R-18でなければ描けていない場面の方が多いと思うのでディレクターズカットで正解だった。グロは大したことないので性的モラルの観点から入る指定かと。

 精神疾患、薬、ドラッグという現実と乖離させるアイテムが入り乱れているのでどこまでが現実かを考えるのも楽しかった。
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