ダミアン君に恋してる

ミッドサマー ディレクターズカット版のダミアン君に恋してるのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

私がこの映画を見るのをどれだけ楽しみにしてたことでしょう!!!!!

大好きなアリ・アスター監督の長編作、第2弾は究極の【失恋映画】だった…っっ!!!!!

待ちに待ったBlu-rayが届いたので早速ディレクターズ・カット版を見たかったんだけど、時間の余裕がなくて先に尺が短い方の劇場公開版を見ることに。けれど返って、この順番で見た方が作品の良さが分かって正解だったと気づく。

ラスト、クライマックスが泣ける…1回目は何かの間違いかと思ったけど、2回目…1回目の時より泣けた。なぜって、もう結末を知ってるからなんだろうね。やっぱり泣けるシーンだった。

これがカタルシスってものなの?ぶっちゃけてしまうと、私、カタルシスって感覚が良く分からないんだ。これがそうなら、監督が言うカタルシス後の混乱・違和感ってのは大成功だね。

全身お花畑化した主人公ダニーがとっても綺麗。でも表情は強張って曇り、そして何かを言いたげにして心震わせてた。

9人目の生贄を選ぶシーン、ここからもう泣けてしまう。ダニーも泣いてる。1回目見た時はこの表情の意味が良く分からなかった。けれど2回目、失恋の痛みにもだえ苦しんでるんだって良く分かった。そして彼をどれだけ愛していたのかを…

一般的に失恋すると人は恋人との想い出の品を捨てたりするよね。よく映画とかだとドラマチックに写真やラブレターを燃やしたりとかさぁ…。そうなんだよね、縁を断ち切るために何かを燃やすんだよね。

要は「炎」。ハッとしたよ…

このダニーは失恋して彼との思い出の品を燃やす代わりに、彼氏自身を燃やしてしまった。究極の縁の断ち切り方法!この設定は本当に驚愕!!度肝を抜かれた。

私にとって、ホルガ村の過激な伝統うんぬんかんぬんはもう関係ない。言うまでも無くこれは本当に失恋映画。本作は、愛した彼を…今でも愛する彼を目の前で焼き殺す映画なんだよ。それも生きたままで…

どうなのよこれ。よくよく考えて?マジでやばいっしょ…

何って、今までの出来事は単なる引き立て役に過ぎない、究極の結末に至るまでホルガ村の人々の影響力を借りているに過ぎないんだから…

轟々と燃え盛る聖殿を前に、残酷な光景を目の当たりにし、取り返しのつかない自分のしてしまった事に耐えられず泣き叫ぶダニーの画が頭から離れない。でも後ろを振り返れば、自分よりも痛みと哀しみの感情を全身で爆発させ狂ったようになっている村の人々の姿が…。「あれ…悲しんでるのは私だけじゃない…私は一人じゃない、村の人々がいる。そう、私には痛みを分かつ家族ができたんだ…。」これをフラフラする頭で曖昧ながら少し感じ取って、今まで抑え込んできたネガティブな気持ちが癒され解放されていく感覚になって、最後のあの場に似つかわぬ"笑顔"となったんじゃないかな。

ダニーの暗い過去を思い出させるような人はもう誰もいない。ダニーにとっての新天地だったんだね。すばらしいラスト!!

クライマックスの音楽がまた良い!これのせいで切なさ飛び火して余計に泣ける。

聖なる浄化。名誉なる犠牲。全能の神、太陽神様。

個の苦しみは消え去り、群で死をも安らかに。

「自然の調和とバランス」という言葉の奥深さに感動。人間も地球に属する生物。その体は朽ち、大地のため血となり肉となり。営み、理性すら自然の大神様に捧げて。

驚くのはホルガ村の人々には全く悪意が感じ取れない。素朴で朗らかな人柄の彼ら。全ては儀式(善意)のために行っていること。無害で純粋そのもの。はたから見れば狂気なんだけど、彼らが生きて喜びを感じるために必要不可欠なこと。生贄として殺してしまう外国人も大切にもてなしている。無駄な殺生はしていない。全て意味のある「死」だということ。

【死と再生】人の魂がめぐるという思想が素敵。

そして現代の高齢化社会問題。確かに年老いた人間は力も衰え若い頃のように働けなくなり社会を支える側としての機能が果たせなくなってしまう世の中。寿命が長くなれば長くなる程、介護される本人も、また介護する家族側の負担も重くなることがある。

これは私個人の意見に過ぎないし、自殺を肯定する気はないけれど、それら現代の事実を踏まえると、ある歳に達した時にその命を自ら終わらせることは、ある意味、有意義なのではないかと考えた。

【いつ訪れるか分からない死=無】のところ、【いつ訪れるか分かっているし死=有】となり、誰か(ファミリー)のために自らの最期を捧げることができるなんて、死する生き物として価値のあることで、人間にとって最高の生きる喜びかもしれないなぁ…なんて。

\\*☆ One for ALL, ALL for THEM *☆//

やばい、私も"郷に入ったら郷に従わされた"かもしれない…。とりあえず、常に私の中にある「死を身近に感じて生きる喜びを感じる」というテーマに完全に当てはまるものだった。

死期が分からないから人間はぐうたらワガママに生きてしまう。もし死期が分かり、限りある生活とその命を全て意味のあるものに変えられるとしたら…その命を次の新しい命へと繋げられるとしたら…この命に感謝し、家族と人生を共にできる喜びに心から満足できるのではないか。

何で生きてるのか分からなくなる時って誰しもがあると思う。少なくとも私は、本作がその難題に導きをくれるような内容になっていると感じた。

この一連の命のストーリー、私は大好きだなっ♡

しかしアリ・アスター監督、恐るべし…!『ヘレディタリー 継承』では主人公が家族に呪われるまでの話を描き、次の『ミッドサマー』では家族に呪われた主人公が呪いを解くまでを描く。ぇ?まるで続編じゃん?なんて楽しいの~!次回作含めて、"家族の呪い三部作"ってことで良さそうね。監督もそうほのめかしているらしいし!

それから、劇中のむごい出来事の数々が創作ながら歴史的事実に基づくものだというから驚き。老人の飛び降りと頭部ハンマー潰し、愚か者の皮剥ぎ、血のワシの処刑法など。またケルト文化伝承、北欧神話やグリム童話の影響も沁みわたってる。そして神聖なる「9」という数字…

いろいろとトリビアが溢れ出してきて面白い。古代歴史に詳しい方々のネタバレ解説を読まないと分からないことだらけ。

ルーン文字の使い方、鮮やかな衣装の刺繍や色使い、建物の形や配色、メイポールの形の意味、食卓テーブルの形、絵画による未来予知、生きた植物、歪む顔面、草の生える手足、裸体共有性交の儀式、サブリミナル効果…その他、細部に至るまで、奇妙づくしでハイセンスな凝りに凝った映像の数々。何だこれは…っっ!!?あぁ気持ち悪い…最高だっっ!!!

中でも、実際に博物館で展示されているという、人の下半身の皮を剥いでズボンにて履いちゃうという、この上なくグロッキーな"ネクロパンツ"という世にも恐ろしい代物が登場。オェッ…吐きそう…

ここでやっとこの方の話題にいける。

本作はウィル・ポールターが出演しているという事でも楽しみにしてた!彼演じるマーク、アホで可愛かった。『オズの魔法使い』でいう脳の無い案山子、『ハーメルンの笛吹』の道化師の役割かぁ…良いね♡こういうファンタジー的な要素が隠れているのも楽しみの一つ。
マークの発言や行動が面白くて吹き出した。カメラの位置気にせず、自由に行動する感じが好き。で画面に入ったと思ったらすぐ出て行っちゃったり、画面に入っているのに一番遠い場所で歩いていたり…草むらを歩く時に虫を踏まないように避けてクネクネあるいたり、トリップ中に一人だけワーワー騒いだり…とか本当にツボ!!!一番お気に入りのキャラ。最後はあんなに無残に(でも綺麗に)皮を剥がされて、ふにゃふにゃの案山子人形になっちゃうなんて残念だけど、燃えるだけに"萌える"しかない♡

招待で訪れたゲストご一行は一緒に燃える事で一体化したんだね…それはそれである意味、美しい…

なんか感覚がおかしくなってきた。
ミッドサマーの熱に浮かされたみたい。

で一つ思ったのが、虫嫌いのマークが靴で踏まないようにしてくれたおかげで、草むらにいる虫たちは命拾いしたんだな~って。地球に優しいマーク!無関心の人たちはズケズケと靴底で自然の調和を踏んづけているんだな~って思ったの。そんな風に環境破壊問題にまで思考がたどり着いてしまった私。マーク好き!だからやっぱり死んで欲しくなかった(笑)

マークが日が沈まないのがおかしいっ!って一人で騒いでたあの皆で草原でゆったり過ごしてるシーン好きだなぁ。地球の息吹と鼓動を感じられて素敵。大自然と一体化した心地よさがあった。そんな癒しのシーンもつかの間なんだけどね。ダニーの精神不安が発作のように突如襲ってくる。

触れるの遅くなったけど、冒頭のシーンが本当に気持ち悪い。本作で一番ゾッとした。排気ガスの無理心中ってさ…鳥肌…勘弁して欲しい。ダニーがトラウマになるのも良く分かる。私もトラウマになった。妹が管を無理やり口に張りつけて毒されて嘔吐して死んでるシーンが本当に怖い怖い怖い…血が一切流れてないのが余計に怖い。思い出すだけでマジで背筋が凍る。っていうかこの様が後々で悪夢やら木々に隠れて幻覚で出て来るのも怖い。呪われている…

本作はそんな風に家族に捨てられ取り残され一人だけ生き残ってしまったダニーが、生活や感情を共有する新たな優しいファミリーに出会って、思いがけず居場所を見つけ心身共に癒されていくっていうお話でもある。

でも9日間の祝祭はまだ4日間残ってるんだってさ…まじ?あのクライマックスで最後じゃなかったのか!?お花のドレスをまとったダニーの運命やいかに…非常に気になりまくる。へっ?まさかメイクイーンは最後の晩餐にされちゃう…とか?ペレ、あんたダニーを守ってやんなさいよ~!!!

そうそう彼氏のクリスチャンだけど、こんなに嫌な奴だったとはね。劇場公開版だとまるっきり省かれているダニーとの口論のシーン。これ大事だったね。これが無いとクリスチャンの腹黒さが伝わらない。ダニーにも非が無いわけじゃないけど、あれではダニーがあんまり。自分が女だからやっぱり女目線で見ちゃう。熱も冷めかける。でも共依存の存在だから完全に嫌いにはなれない…といったダニーの体質が私の中にも流れてて、自分の過去の恋愛と重なってしまう。ダメ男を好きになって離れられないそれ、良く分かって辛い。だから最後はあんなに泣けちゃうのかも。悲劇のヒロインを演じたがりなのぉ♡説明のつかない快感…♡

愛している(た)から燃やす…超エモいっしょ♡

本作を撮って、監督の失恋が癒されていると良いなぁ。

今日は私の誕生日*☆
アリ・アスター監督と同じ歳になりました。プレゼントにお花いっぱいの奇祭ファンタジーを届けてもらいました。ありがとう♡

私とこの世を同じだけ生きてきた彼。そんな彼の作品を通して共感できるものは私にとって特別なものに感じる。

まだまだ色々書きたりないし、思い描き足りないくらいにどっぷりな『ミッドサマー』。もうしばらく本作に携わり、北欧の文化や民話伝承などが映画に与える影響と、改めて興味を引いてやまない監督の才能について紐解いていって人生観と精神道を学べたら嬉しい。

\\*☆Happy Birth Midsommarday*☆//

*☆Keyword*☆
『今夜マークのベッド下にそっと…♡ フフ』