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街の灯のtakのレビュー・感想・評価

街の灯(1931年製作の映画)
5.0
 2010年3月いっぱいで生息地にある大型ホールをもつ施設が閉館。ここにはパイプオルガンが設けられており、存続を望む声が多かった。閉館行事の一つとして、パイプオルガンのコンサートとチャップリンの映画上映会が催された。歴史ある会館を惜しむせいか、観客はすっごい年齢層が高い。チャップリン映画リアルタイム世代?(笑)と思えるくらいに。

 僕が小学校高学年の頃、チャップリンが亡くなった。クリスマスだったのをよく覚えている。テレビ各局は次々にチャップリン映画をながす追悼番組を組んだ。亡くなってから1年間くらいにかなりの作品が放送され、「モダンタイムス」「キッド」「ニューヨークの王様」「独裁者」「給料日」「犬の生活」など主な映画はほとんどそれで観る機会を得た。またラッキーなことにちょうどその頃地元の映画館で「黄金狂時代」と「モダンタイムス」のリバイバル上映も。チャップリンをスクリーンで観る貴重な機会だった。

 中でも「街の灯」は最も好きなチャップリン映画。何度も繰り返し観たし、ストーリーはちゃんとわかってる。盲目の花売り娘を助けようと、放浪紳士チャーリーが奮闘する物語。目が見えないので、チャーリーは金持ちだと勘違いされている。それ故のギャグも面白いし、嘘をつき通しながらチャーリーは娘を励まし続ける。酔いどれ富豪との軽妙なやりとりも実に面白い。やがて娘が家賃を滞納していることで、立ち退きの危機に。チャーリーは娘の為に金を稼ごうとボクシングの試合に挑む。この場面は何度観ても面白い。強盗の濡れ衣を着せられるが、なんとか娘に金を渡すことができる。何度も観ているけどやっぱり楽しい。

 場内にいる子供たちが80年前の映画を観てキャッキャいいながら笑うのね。それも楽しそうに。CG全盛の昨今だけど、今の子供にもチャップリンの芸は通じるんだな、ととても嬉しくなった。

 さて、出所したチャーリーが花屋で娘と再会するラストシーン。これ観て何度泣いたかわからない。路上に掃き捨てられた花を拾う浮浪者を哀れむ娘。チャーリーはそこから立ち去ろうとするが、娘は追いかけて来てお金を渡す。そして手が触れあった瞬間に、あの自分を救ってくれた紳士だとわかるのだ。何度観てもグッとくる名場面。もう花屋の前に来た時点で僕の涙腺はもうそろそろヤバくなってきた。何度も観ているはずなのに・・・。
「あなたでしたの」
この字幕を目にしたらもう我慢できなかった。
「見えるんだね」
「ええ、見えます」
やっぱりチャップリン映画は素晴らしい。これを銀幕で観られたことに感謝します。

初見は1982年1月、テレビ地上波にて。
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