銀のしずく

海を待ちながらの銀のしずくのレビュー・感想・評価

海を待ちながら(2012年製作の映画)
5.0
タジキスタンのフドイナザーロフ監督作品。

アラル海のほとりの、海が干上がってしまい砂漠化した町を舞台にした作品だが、環境問題がテーマではない。海で生きていた人々は砂漠でも、悪事を働いたり、恩に報いたり、愛したり悲しんだり暴れたりしながら生きている。『ルナ・パパ』の監督らしく登場人物はみんなちょっとずつ変で楽しいが、物語は深い悲しみをたたえている。

海が干上がるということは人生の深い苦しみの象徴だが、生活の営みの描写が、観念的になりがちなテーマに実体を与えている。
気候変動は不幸をもたらすが、それに押しつぶされない人間の蘇りの力が、美しく描かれている。日本初公開の2012年作品だが、もっと広く見てもらいたい作品。