りっく

ミッチェル家とマシンの反乱のりっくのレビュー・感想・評価

4.5
『21ジャンプストリート』『LEGO(R) ムービー』の両シリーズで一躍2010年代の要注目監督となったフィル・ロード&クリス・ミラーが、大傑作『スパイダーマン:スパイダーバース』の脚本を手掛けた後、製作としてクレジットされた本作は、過去の作品に負けず劣らずの驚異的なクオリティで全編を駆け抜ける、2021年を代表するアニメーション映画に仕上がっている。

一癖も二癖もある個々の集合体が家族であるというベースがあり、理想の家族像という幻想に囚われすぎている滑稽さは、最近の映画だとアプローチは異なるが『哀愁しんでれら』を連想させる。ただ、どこか変わっているということは、それだけ熱中できるものがあり、自分だけの世界があり、それらと周囲や他者との距離感や折り合いをどうつけるか、という主軸がしっかりしているからこそ、膨大な情報量とスピーディーな展開にもかかわらず、とっちらかった印象は微塵もなく、ファミリー映画として純粋に感動する。

その過程で、例えば大人は大人らしく肩肘を張る必要もなければ、子供は何かを我慢する必要もない。それぞれの「好き」を認めることや、「好き」になるまでの物語を知ろうとすること。それがお互いを認め合い、尊敬し合うことになるといったようなフラットな視点がいい。さらにそれは作劇上でも同様で、それぞれの「好き」「個性」を最大限に生かした見せ場をつるべうちすることで、各キャラクターを最大限尊重し、輝かせようとする作り手の愛のある姿勢が透けて見えてくるからこそ、観ているこっちも嬉しくなる。

その中で映画制作が好きな長女が、映画学校に入ってからも、いわゆる格式のある「映画」ではなく、Youtubeに上げるような「動画」を制作し続ける点も興味深い。素材を加工し編集することで、現実が気軽に楽しく明るいものになる。かつて、エドガー・ライトがゲーム感覚に溢れた『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』を撮ったが、それをさらに現代にアップデートしたお手軽感覚が本作の全編に溢れかえっており、それをNetflixが製作していることも含めてとても面白く、それがメチャメチャ楽しいのだから恐れ入る。

情報化社会やインターネットやスマホに依存した現代を痛烈に茶化すような小ネタの数々もてんこ盛りでそれだけでも楽しい。特に顔認証システムで犬の顔を認証できずにエラーを繰り返す、怒り狂ったスマホが卓上でブルブルと振動して怒りを露わにする、防水機能が備わっていない旧式だからこそあっけなく水で故障する等々、いちいち爆笑をかっさらっていくのが最高のひとこと。
https://www.shimacinema.com/2021/05/05/the-mitchells-vs-the-machines/
りっく

りっく