Aya

Swallow/スワロウのAyaのレビュー・感想・評価

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)
3.9
#twcn

2020年、2021年の中でベストEDロール!!

ここに全てが集約されているとも言えるほど私はこの映画の真髄があのシーンに詰まっていると思います!

異食症のヘイリー・ベネットのストーリーを90分見せてあそこを着眼点としたのがすごい!

※なぜそこまでEDを評価しているのか?がこの映画を語る上でとても大切なのでネタバレを下に書きますがEDだけなのでネタバレになるかどうか微妙です※

2019年の映画祭を席巻していた今作。楽しみにしてたのぉ!!
もうほんと見れてよかったぁ♪

超金持ちの親に恵まれたハンサムな夫とNYの田舎へやってきた奥様ヘイリーちゃん。
ブランドのおかっぱ頭に真っ赤なリップ、ブルーのアイシャドウと色彩設計かDV以外のナニモノでもないメイク。

家も車も仕事も両親からプレゼントされるのが当たり前。
湖近くに人口プールを作る違和感。
ガラス張りのベランダ柵。
カーテンのない窓には彼女自ら赤と青のセロハンを貼る。
見えないようで実は人ものの見え方を変えただけのニセモノ。

家具の配置も真っ直ぐでしかなく、皺のあるネクタイは罪。
怠惰は許されるが怠慢は罪。常に夫のご機嫌を取り、義両親のご機嫌を取は彼女はまるで生きている人間とは思えない。

自我のない人形のようだ。
そんな彼女が妊娠をした。
彼女以外は大喜び。

なぜなら資産を相続するモノができたから。
彼女はソレを作る為の工場。

妊娠を機に彼女を襲ったのは、シテハイケナイと言われること。

自分の身体を痛めつけながら、異物を飲み込む快感と支配欲。
たまらない。
こちらまでその快感が伝わってくるほどにリアルで、こちらまで痛くなるほどに鋭利だ。

この映画もとても鋭利。

着飾った妻との食事中も浮気相手とのやりとりをやめない夫。
そんな夫の「ハグをして欲しい、ただ寂しい」という言葉を使った性犯罪者。
自身の全てを注ぎ込む辛うじて悪気のない堅物の義母。

そしてコンプラ無視のカウンセラー。

そりゃなんでも口に入れたくなりますわ!
この映画には1秒たりとも彼女が幸せな瞬間はない。

異物を口に含み、喉に押し込み食道を伝って内部から彼女を痛めつける時間以外は。

氷から始まりビー玉、鍵、ドライバー、ガラスに土と異食症としては王道のメニューに沿うことからこの映画のキモは何を飲み込むかではない。

なぜ飲み込むか。
なぜ飲み込まないのか。

非常に上質な文章の小説を読んだ気分です。

シリア難民の看護師a.k.a見張り役の判別ついてる感も素晴らしく、出番めっちゃ少ないのに重要。

そして飲み込むことをやめ、吐き出すことで彼女が求めたものは・・・。

(T . T)

なにその話?!
全然普通の家庭じゃないし!
クソばばぁぁあ!!

そしてそのクソババァと共に縛られていた宗教ともう一つの大きな根幹。
あの行動凄いと思う・・・。

行き場を無くしたとてよ?!
そこ行く?!って・・・ツラ過ぎる・・・当然の報いだよ。
クソ・・・。

あの幸せそうな家庭だって分からないよ?
表面上はヘイリーちゃんだって理想の夫婦だったはず。
だからこそ彼女が垣間見たもう一つの家庭も円満かは分からないという余地。

おっそろしい!!

オーソドックスな女性軽視の話に異食症の妊婦というアクセントを加え、これまたよくある彼女の出生の秘密を可哀想な被害者として描くのでは無く、弱くも強く挑む彼女の姿は痛々しく勇々しかった(T . T)

そんな苦難過ぎる過程を経て、皮肉にも強い意志を獲得しヘイリーちゃん自身が初めて自我を持つというお話でした。

そしてあのエンドロール。
すっ凄い!!

女子トイレとはどういう場所ですか??
たしかにトイレですることは2つにひとつですがwそれだけではない。

堕胎もできればメイクも直すし手を洗ったり髪を整えたり。
逆に2つのうちの1つもしない人いれば手を洗わない人もいるしハンカチを持っている人は皆無。

女子トイレで流れるエンディングテーマはアラナ・ヨークの"Anthem"

アンセムですよ。
俺たちの!私たちの!ですよ!!!
自分の足で立つ女子トイレに出入りする様々な人々。
そして去ったヘイリーちゃん。

このエンドロールは本当に感動して涙が止まらなかった。
素晴らしいです。

今日(3/8)は国際女性デーです。
皆さんにもこの映画を見て、このEDを見て、この曲を聴いてほしい!

まさにうってつけの曲です。

3ヶ月ぶりの出町座・・・近くにいるのに会えない彼氏みたいw


日本語字幕:平井 かおり
Aya

Aya