「セクシーボーイになど興味はない」
「……あるかも」
封印から解き放たれてしまった残虐宇宙人――サイコ・ゴアマン!!復活して殺戮の限りを尽くそうとした矢先、ひょんなことからクソガキ女子の支配下に置かれる!!そんな訳で蓋を開けてみるとB級SFバイオレンス特撮ファミリー映画である。日本版ポスターの昭和特撮じみた確信犯的なビジュアル、味わい深くて良すぎる。
本作の魅力とは全編に渡ってスプラッターやナンセンスなユーモアが散りばめられながら、何故かファミリー向け作品のテイストに纏まっているところである。要するに一家が未知の存在と遭遇し、騒動や不和を乗り越えながら“愛”で結び付き、最後のお別れへと帰結していく物語なのだ。絵面に反してストーリーラインは半ば『E.T. 』の類いであり、アクの強さとは裏腹に骨子は不思議と率直なのである(それはそうとサイコ・ゴアマンなどのせいで頻繁に血なまぐさくて味わい深い)。
その上で登場人物達の味付けが何とも印象的で、残虐で冷酷なサイコ・ゴアマンを振り回すガキ大将女子のミミが絶妙すぎる。とにかくミミのふてぶてしい悪ガキぶりが強烈なので、見ている内にサイコ・ゴアマンに同情や親近感を抱いてしまうから笑う。結果としてバイオレンスなのに何処かシュールでカラッとした雰囲気になっていて、露悪的な描写のえげつなさも緩和されているという奇妙な均衡が発生している。妹ミミに付き合わされる兄のルーク、脳みそお化けになる友人アラスター、怠け者のお父さんとそんな彼に内心不満を抱くお母さん、ボンクラ感漂うテンプル騎士団など、他の面々もいちいち一癖あって印象深い。セクシーボーイの下りがなんか好き。
往年のB級SF/ホラーを下地にしたようなビジュアルも良くて、サイコ・ゴアマンの造形は何だか『大アマゾンの半魚人』めいている。サイコ・ゴアマンを中心に気ぐるみや特殊メイクで作られた怪人達が前面に押し出されていて、日本の特撮モノじみた絵面がとても良い。サイコ・ゴアマンの忠臣達(血をブシャーッと放出する謎兵器持ちの奴が好き)からテンプル騎士団の面々に至るまで、どいつもこいつも造形の拘りやギミックが絵的に素晴らしい。パンドラなんかは仮面ライダーの怪人じみた趣があって良い。画面の低予算感が却って特撮表現の素朴な魅力を際立たせているし、要所要所のゴア描写も景気の良いポップさに溢れてて楽しい。前述した通りシュールな雰囲気が強いので、どれだけ暴力的な描写が繰り広げられてもサラッと見られてしまうのがおもろい。
どう見ても珍品の類いなのに物語自体は“家族の再生”と“愛”によって着地し、最後は何だかんだほっこり(?)させられてしまう。お父さんの復活劇や兄妹の和解など、憎めない下りが妙に多い。巡り巡ってクレイジーボールへと繋がる最終決戦のバカバカしさやアツさも含めて、血なまぐさいのにやっぱりファミリー映画すぎる。それはそうと感動的な別れの直後にはもうサイコ・ゴアマンが普通に市街地大破壊かましてたりアラスターがそのまま日常生活を送ってたりするのは笑った。