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ファイブ・イージー・ピーセスのKeNのレビュー・感想・評価

3.4
U-NEXTにて。再見。

『サンダーバード』に出てくる人形のような顔をしたカレン・ブラックが嫌いな為、恐らく名画座かビデオか何かで一度観たきり再見していなかったボブ・ラフェルソン監督 & ジャック・ニコルソンのコンビによる”アメリカン・ニューシネマ“な一作。後にふたりは『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などでもタッグを組んでいる。

裕福な音楽一家の家庭に生まれ育ちながら、ドロップアウトして石油採掘現場のワーカーをしたりして職を転々としてきた主人公が、恋人の妊娠を知り逃げるようにして飛び出したはずの実家に帰省するという至って地味なストーリー。その地味なストーリーとあまりにも久しぶり過ぎる再見の為に、結局 最後の最後まで物語の展開を思い出せなかった…(苦笑) そういう面からも同じジャック・ニコルソン主演のアメリカン・ニューシネマ作品『さらば冬のかもめ』に似てるかもしれない。

ただし、名優にして“怪優”のジャック・ニコルソンの演技はお見事以外の何ものでもなく、トーンを落とした抑制の効いた喋り方をしていたかと思ったら、突然 キレまくったり、激しい”営み“を演じたりと、この作品においてもエキセントリックな魅力を発揮している。

あと、ショバンの「前奏曲ホ短調」やJ.S.バッハの「半音階的幻想曲とフーガ」などのクラシック音楽と、時折 挿入されるカントリー・ミュージック ー こちらも自分の大の苦手分野…(苦笑) ー とのギャップが住む世界の違いを示すようで絶妙。因みにタイトルとなっている『Five Easy Pieces』というのは、ピアノの習い始めの時に最初に習うべきやさしい曲という意味らしい。
しかし、ビアノを弾いているニコルソンを見ていたら、この頃にグレン・グールドを役を演じさせていたら最高だったかも…という妄想が頭をよぎった…(笑)


いずれにせよ、この作品に感じられる先の見えぬ閉塞感や社会からの脱落感のようなものは、同時代を生きた人たちにしかわかりえないものがあるように思う。
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