あべ

蒲田前奏曲のあべのレビュー・感想・評価

蒲田前奏曲(2020年製作の映画)
4.0
映画秘宝で大槻ケンジが渡辺の4話『シーカランスどこへ行く』を激賞していたのでずっと気になっていたがようやく見ることができた。

大槻の言う通りだった。

渡辺紘文、よくやってくれたなという感じ。

少女相手に繰り広げられる渡辺の辛辣なトークは、プロデューサーの松林うららに与えられたテーマだという《東京中心主義の批判》を飛び越えて、ろくでもないプロデューサーがはびこり、詐欺まがいのワークショップがあふれる映画界を批判し、政治や東京オリンピック開催の是非にまで飛び火、芸能界の薬物汚染、果てはオムニバス映画批判にまで逸脱する。この逸脱するマシンガントークがブラックユーモアと皮肉と馬鹿馬鹿しさに満ちていて抱腹絶倒。思わず笑ってしまう。

大槻が言うように、過激で挑発的な毒気を含む渡辺の映画は、もはや映画というよりも歪な現代芸術を見ているような感覚に陥るし、ハードコアなプログレや前衛ジャズを聞いているような気分さえなってくる。
正直期待半分、不安半分で見に行ったが期待していた以上に刺激的で充実した映画体験になった。

渡辺には今後も世俗に迎合したり誰かに媚びたりしない映画を作り続けて欲しいと思う。
全体を通しては第3番の瀧内公美が実力相応の演技力をみせており図抜けて良かった。
あべ

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