えいがうるふ

ハッピー・オールド・イヤーのえいがうるふのネタバレレビュー・内容・結末

4.9

このレビューはネタバレを含みます

予告を見た限りではただ単にドライな主人公が淡々と断捨離をやり遂げる話かと思っていたので、まさかこんなに泣かされるとは完全に油断していた。個人的にめちゃくちゃタイムリーな内容だったこともあり、刺さるどころか痛いところにぐいぐい塩を擦り込まれ、感動というより単純にあまりの痛さに涙があふれた。
その一方で、物理的な痛みでは泣くことのない自分が心が痛いだけでこうもするする涙が出ることを改めて思い知り、人間の心と身体の仕組みはなんと面白いものだと妙に冷静に受け止めている自分もいた。

とにかく、主人公ジーンほどではない(借りパクはありえない!)が、自分もけっこう人間関係にはドライなところがあり、かなり身につまされた。彼女がそういう人になってしまった背景まで自分と被り、もうグサグサにやられた。ああ、ごめんなさいごめんなさいと一緒に謝りながら観ていた。
ものすごくやさしい人たちに囲まれていてもなおやさしくなれないジーンが、残念な自分を見るようで苦しく、お兄ちゃんのさりげないやさしさが涙腺をさらにダメ押し。ううう。
それでも、ただ人々のやさしさに甘えるだけで終わらないビターな結末に救われた気もする。
私も、決して捨て去れないこの罪悪感を背負って生きていきます、はい。

それでもきっと、痛みと引き換えに執着を手放せる人間はまだいいのだ。大切なものをうっかり捨ててしまって泣くのは自業自得なので仕方ないし、その痛い後悔から我が身の弱さ愚かさ傲慢さにようやく気がつけることもある。
問題は捨てたくても捨てられない人だ。捨てないと前に進めないことは本当にある。だからこそ良かれと思って彼女はあれを断行したんだろうが、そこはやはり捨てられない本人が自分で涙をのんで決断してこそだろう。あんな最低最悪なやり方では後々まで禍根を残すと思う。嗚呼。

それにしてもこんまりメソッドの世界制覇っぷりがスゴイ。「ときめきの有無で判断」という分かりやすさは世界に通じるのだろうか。素直に感心した。