このレビューはネタバレを含みます
20210111
滑走路・2020
KADOKAWA
よかった
取り扱われているテーマが、多くて、2時間で人生をこれ以上に描ききっている映画があるのか、と感動した。
萩原慎一郎の詩と感性がずば抜けているのは言うまでもない(はず、読んでいません)なのだけど、それを描き切る監督脚本がほんとうにすごい。言葉以外で何かを伝えるのは、それをほんとうに伝えようと思っている人にしか出来ないと思うから、監督脚本さんがこの作品をどう考えているのか、話を聞いてみたいとすごく思った。
そして、やっぱりSano ibukiさんは良かった。hisの時と同じく、曲で泣いた。何でこんなにこの映画が伝えたい感情をうまく包み込んで、でも映画内容の単なるリピートにならない伝え方をできるのだろう。
テーマが沢山盛り込まれている話なのにも関わらず、一つ一つに強弱の差がなく、かといって詰め込みすぎているわけではなくまとまりがある。それぞれの物語に救いはなくて、人が日々浴びているかなしみを敢えて心の底から抉り出して思い出させるかのようなもの。でも、その物語が、「自分以下を見つけて安心する」とかの綺麗でない感情とはまた違う意味で、救いになる。生きていく上でずっと大事にしていきたい映画だなと思った。
このまま努力し続ければ自分の人生はいつか『正解』になる、と無意識に思ってしまって理想と遠い現状が苦しくなる。
だけど、いつだって人が抱える痛みはその人より一回り大きい。
私たちは誰かをわかりたい受け入れたいと思うけど、お互いに全てを理解することができずに、でも誰かにわかって欲しいと思うことをやめられない。
そうやって苦しみながら生きていく、道半ばでそこから脱落してしまう人もいるし、向き合うことを諦める人もきっといるけど、誰も不正解ではなくて、全部人生で。
人生に起きる痛みは全て取り払わなきゃいけない、とは思わなくてもいいかもしれないな。そう思わせてくれた映画でした。痛みも抱えて愛おしい人生。
暇な時に見よう、と思うライトな映画ではないけど、人生の節目や悩んだ時に必ず見返したい映画です。
観てよかった。やっぱり映画が好きだなぁ
2021年3作目
#映画滑走路