逆鱗

失墜の逆鱗のレビュー・感想・評価

失墜(2020年製作の映画)
3.0
サバイバルがテーマならとことんこだわって欲しい。

特にメッセージ性はないように思える作品。
地元の食品屋のオヤジがサバイバル術をYouTubeで配信しており、それを見た有志がそれぞれに思う終末に備えて、サバイバル術を習う合宿に参加。

食品屋のオヤジは広大な土地を有し、そこで自給自足のサバイバル生活を過ごすキャンプを用意しており、参加者たちはそこへ道中目隠しをされて連れてこられる。

やがて訓練が始まるのだが、食肉確保のための罠の仕掛け方、肉の捌き方、野菜の育て方、薪の割り方、銃の打ち方などを一通り習う。
そんなに厳しくなく、和気あいあいと進む。

食品屋のオヤジは途中で水の流しっぱなしを叱る程度で、神経質さやサイコな危ないヤツという感じもない。

そんな中、手製爆弾の訓練の終わりに片付けてしている最中に、暴発が起きて死者が出てしまうところから一転して物語は急展開を迎えるのだが...

誰かのバケの皮が剥がれてサイコパス丸出しになるわけではなく、割と起きてしまった事件を隠すというその場限りの対応に不信感を持つまともな者と、社会に馴染めなさそうなキャラは、隠してどうにかなると思っている者とに分かれて、脱走とハンティングが始まる。

ただ、残念なのは脱走もハントもサバイバル術は活かさないこと。
この作品の舞台が台無しじゃないかと思ってしまう。
脱走する方は途中味方が罠にかかり1名死亡してしまうが、そのあとは川に落ちるピンチがあったが、あまりサバイバル術とは関係なく、冷えた体は人肌で温めようという素人でもわかる技で切り抜ける。
ハントする方も、冒頭でいろいろ罠あんぜとか自慢していた割には、以降何にもかからないし倉庫から武器と食料をまんまと盗まれる始末。
また、こういう作品ならではの、足跡を追う技は誰も使えないというハントする側の食品屋のオヤジの中途半端サバイバル知識。

逃げる側は、どうにか行きしにマイカーを駐車した地点まで戻りエンジンをかけて出発と思いきや進まない。原因はタイヤをパンクさせられているという、これも素人でも思いつく悪戯レベルの罠で足止め。
そこでライフルで撃たれて1人死亡。

ラストはイスラエル元女兵士のみ。
兵士らしく銃撃戦を制し、怯んだ相手を銃の持ち手で殴り倒す。
そしていよいよラスボス食品屋のオヤジとの対決。銃撃から肉弾戦に移り、元軍人とはいえ非力な女性が熊のような男と戦うのはかなり劣勢だったが、ここでイスラエルの最強の軍隊格闘技グラヴマガの関節技が炸裂!腕を極めながらのチョークスリーパーで、腕折りに成功。

唯一ここだけだったよ、設定の妙が活きて、ならではの面白さが出たのは。

以下蛇足。
80分くらいのタイトな作品でサバイバルものというジャンルムービーだから、設定のキモを活かして工夫して戦い、まさに生き残るというところがミソで面白さだと思うのだが、もったいない。

レベナントみたいに命からがら、やっと生きて帰るような極限のサバイバルか、工夫で戦いラスボス懲らしめるスカッと感か、どちらかは欲しかったなぁ。
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