青山祐介

旅路の青山祐介のレビュー・感想・評価

旅路(1958年製作の映画)
4.5

『Even with their separate tables they can talk back and forth』原題は「銘々のテーブル」
イギリス海峡に臨む霧深い海岸町ボーマンスの古ぼけた小さなホテルに滞在する10名の男女と、ホテルを経営する中年の婦人の、愛と孤独の群像劇です。彼らは昨日と同じように今日もまた食堂に集まり、決められた「銘々のテーブル」につきます。

1983年妻は山深い信州のリハビリテーション専門施設に入所いたしました。リハビリが目的ですから、看護師の数は限られ、自立できないものは派出婦会のヘルパーを雇わなければなりません。遠い東京からの患者を受け入れているため、家族の付き添いは殆どありません。食事は3階の食堂に集められて摂ります。脳血管障害の患者が多いために誰もが無言で、静寂の中で食事は進みます。音を立てず、壊れないようにと食器はすべて樹脂のものを使っています。妻はよく言ったものです―ワインぐらい欲しいわ、それもワイングラスで、他に何にもないんですもの。

旅路の映画の中で、恋人を追ってきた登場人物が言います『ニューヨークの方が……このホテルよりも孤独になるのよ…大勢の人の中で独りぼっちなのはいけないのよ。ずっと痛々しいし…恐ろしいことだわ。』