阪本嘉一好子

Razzia(原題)の阪本嘉一好子のレビュー・感想・評価

Razzia(原題)(2017年製作の映画)
5.0
1982年アトラス山脈の田舎の先生はモロッコの首都ラバト(Rabat)からの政府の役人に監視され、カリキュラムをベルベル語ではなくアラビア語にしろと命令を下される。アラブ語が聖なるコーランに基づいているらしい。しかし、生徒はアラビア語を使ったこともなく言葉を発することもできない。先生は情操教育を大切にしてる。でも、新任が来たので、かれはここから追い出されてしまう。

2015年カサブランカの町。ある女性は金持ちそうな(?)夫がいるが、妻に望むことは、自分の思う妻に育てることで彼女の意思をまるっきり無視している、タバコを吸うなと命令するが本人はタバコを吸う。女性バーでダンスをする妻より買い物をする妻を望んでいる。この夫との間に子供ができるが堕胎を試みるが。モロッコは堕胎は違反である。ー女性に対する


目的を持たないユダヤ人のレストランの経営者は病気の父親(ailing father)の面倒を見ている。それに、街で娼婦を拾って、彼女を家に連れてくるが、部屋にはトーラと写した写真が飾ってあり、彼女はこれをみて怒りを表し帰ってしまう。私の理解ではアラブの彼女の過去はユダヤ人に憎しみを持っているのではないかと思った。彼はレストランに勤めている人と『カサブランカ』(1942年)をみる。よく見ているので、台本を覚えてしまっているようで、この作品が彼とレストランの従業員に夢を与えている。夢の中に生きて現実がはっきり見られない人たち。ー宗教の差別。


家族がおおく経済的に豊かでない家庭の若い青年はクラブで歌っている。息子はモロッコのフレデリーマーキュリーになりたがっている。こういう仕事を父親は望まない。収入の安定した仕事についてもらいたいと思っているので、彼を認めてあげていない。父親は収入も多くなさそうな家庭なので、親の期待は息子に定職をもって稼いでもらいたいということらしい。

ユダヤ系高校生の少女は誰にも愛されていないと感じている。裕福でお手伝いさんがいる。母親は他の男に夢中だし、この高校生は友達とは別の世界にいるようだし、セックスに目覚めて、チャンスをうかがっている。

それぞれの主人公はなにか心に影を持っている。相手にされなく理解されない五人の集まりをそれぞれ描いて最後に結びつくようになっているが、結びつかない人もいる。自分が身近な人に理解されないほど悲しいことはない。