イベリー子豚

護られなかった者たちへのイベリー子豚のレビュー・感想・評価

護られなかった者たちへ(2021年製作の映画)
3.8
いやはやいやはや。

もっと「震災」についての重苦しくて窒息しそうな
人間ドラマかと敬遠しておりましたが
あくまで「震災」は大きな副産物で
メインは「貧困と生活保護(社会福祉)の闇」に
まつわる、エスプレッソを煮詰めたような
濃ゆくて苦いミステリー的人生劇でした。



かなり『64』や『楽園』に近いイメージですね。

そしてこれまた役者さんが皆さん熱演というか
絶演……。


予告でも流れていた鬼剃りまゆ毛の佐藤さんの
泥水咆哮はご本人の提案だそうで
普段の優男役と真逆の
深い闇と孤独を抱えた不器用で
「見るからに殺人経験者」のオーラが半端じゃなかったです。


何より主演を喰う表現力の清原果耶さん!
今回が過去イチかもしれないですね。
いつもの「清楚な前髪ぱっつんストレート勝ち気
オシャベリ美少女」も素敵ですが
「大人っぽいデコ出し」も、「ボサボサ頭の学生役」も完全に「その人物」でした。

 
その他もドラゴン寛はじめ、林遣都さん、吉岡さん、
永山兄さん、安定の布陣です。


設定は少しオーバーにも感じましたが
確かに困窮し、保護だけでもやっとの暮らしを
されている方がいる一方で
息子がTVで活躍しているのに
「貰えるもんはもろとけ!悪いんか!」精神の
課長の母のようなモンスターもいるワケで
その全てを一部の事務員たちだけで抱えるのは
物理的にカバーしきれないんでしょうね。


ただ気になったのは
「汚名挽回」発言と「唐突なバレエ」。
これは原作通りなのでしょうか??
「部下の蓮田」の独り言でいいから
「日本語ヘンですって……」ぐらい入れて欲しかったですね。
あとあのエンディングならエンドロールは
クラッシックか無音が良かったかな。
桑田バラードはアクが強すぎて
こういうハードな感動系に合わないです。

他のモヤモヤはコメントに。


上記の謎は最後まで解けませんでしたが
「日本の福祉の現状」、
「まだ終わっていない震災の恐怖」を再認識する
ことが出来る素晴らしい作品でした。