ジャン黒糖

君が世界のはじまりのジャン黒糖のレビュー・感想・評価

君が世界のはじまり(2020年製作の映画)
3.3
監督で映画を観る。
今回はふくだももこ監督③。

ふくだももこ監督自ら執筆された短編小説のうち2篇を1本の映画として描いた本作。
主演は同監督作『おいしい家族』に引き続き松本穂香さん。

んー、元々別々に作られていたという短編2篇を1つの映画にまとめなくても良かったのかな…。

主人公・縁の親友であり学校内で異彩を放つ琴子がせっかく映画冒頭から魅力を炸裂していたのに、物語後半そのカリスマ的存在の特別感が一気に薄まる。
しかしショッピングモールのクダリ自体が悪かった訳でもない。
となると、元の短編を読んでいないのでわからないけど、たぶん1つの映画に混ぜた結果、そこがうまく成立しなくなっちゃったのかなと推察。
(間違ってたらすません、、)


もうじき閉店となることが告げられている地方の巨大ショッピングモールを舞台に描かれる後半、琴子は登場せず、彼女を除くこの映画の主要人物それぞれが、この深夜のショッピングモールでの出来事を通して精神的に少し大人へと成長する。

琴子という存在が、この深夜のショッピングモールで一夜を過ごした他のみんなにとって特別な存在、先行く存在であれば琴子がここにいなくても良しとされるかもしれない。
ただ、短編小説における縁、琴子サイドとは別のもう1篇の主人公である伊尾サイドのクダリは少なくともそういう立ち位置でもない。というか、伊尾と琴子はほとんど面識がない。

そのため、ラスト縁と琴子がすごく良い雰囲気ありげで、何かしらのメッセージを感じるけど、他の主要人物たちが少し大人へと成長している分、冒頭あれだけカリスマ感のあった琴子だけが(破天荒なキャラにちゃんと説得力を持たせて見事演じられている分)出遅れてる感があって残念だった。
たぶん、それがこの映画タイトルに繋がる、ということなのだろうけれども、肝心のラストがちょっとスッキリしなかった。

と、ここまで琴子に肩入れしてコメントしてしまうのは、おそらく今泉力哉監督作『街の上で』ではイハ役を演じた中田青渚さんにすっかりドハマりしたからなのかな笑


この、2つの短編を1本の映画にするうえでうまくいっていない部分が個人的には気になった箇所で、冒頭で描かれる殺傷事件に示唆される犯人の衝動的な行動と、主人公ら高校生たちのどこか空虚でここではないどこかを羨望する淡さと、もうじきなくなるショッピングモールの哀愁など、青春映画としては良かったんじゃないかなぁ。

高校生役を演じたそれぞれ良かったっすね。
中田青渚さんはいうまでもなく最高of最高だったし、伊尾役の金子大也さんは『サマーフィルムにのって』で演じていた役も彷彿とさせるような、周りに対して冷めた目線とそれゆえ少し孤独な役どころで良かったし、純役の片山友希さんもいなくなってしまった母への寂しさと母親代わりになろうとする父への苛立ちを目線ひとつで演じられてて良かった!

あとフード描写!
たこ焼き、お好み焼きなどの関西定番フードが度々出てくるけれど、それぞれが繋ぎ止める人間関係、良かったっすね。


ということで、『父の結婚』『おいしい家族』『ずっと独身でいるつもり?』と、こういう愛の形、家族の形も良いでしょ、という作品メッセージがやや押し付け感のあったふくだももこ監督作のフィルモグラフィからすると本作は高校生の群像劇である分、その印象が薄れているので、同監督作のなかでは一番好きな作品かなぁ。
ただ、繰り返しになるけど2つの短編を1本の映画にした分、話としては散漫になってしまった感は否めない!