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君が世界のはじまりのPTKMWのネタバレレビュー・内容・結末

君が世界のはじまり(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

誰かを応援すること程難しい事はなくて、善意の言葉が他人の見えていない部分に深く刺さって消せない傷になる事もあるかもしれないと思うと恐ろしくて応援なんてそうそう容易く出来そうもない
誰かを応援する事は自分が善意の加害者になるかもしれない恐怖に対する覚悟と何がなんでも他者に寄り添う優しさがなければ成立すらしない
そう思うとそれを曲にして知らない人に向けて歌うブルーハーツって偉大だな

可能性の宝庫である10代のメタファーとしてのショッピングモールで遊び、はしゃぎ、他者に思いを馳せて悩み、優しさを学ぶ縁達はこの映画の最後には成長していつかは閉店することが決まっているその場を後にする
一方、南さんはその中で全てを済ませて今でも子供のまま優しさを知らずにその場で停滞している
最も無邪気でそれ故に自らや他人を傷付けやすい琴子という人物の視点からだとゆかりには「えん」としての側面と「縁」としての側面があり
同様に業平にはギョウヘイとしての側面がある
何が入っているか分からない巨大な貯蔵タンクは隣にいても何を考えているか分からない他者のメタファーになっていて
自分の見えていない部分の他者を想像していく過程を描く為の視覚的、文学的な表現とその試みがとても美しい
夜には見えてたものが日に照らされて見えなくなったり、闇の中だからこそ見えないものに想いを馳せたり、自分には感じ取れないものを感じ取ろうとする優しさがありとあらゆる方法で描写されている
誰にも追いつかれない琴子に最後には追いついて泥まみれになるシーンもまた良し
長い夜が開けて朝日が上りかけのショッピングモールから去るシーン、ブレックファストクラブ
人にやさしくしようと思える、
観た後に少し優しくなって新しい世界がのぞくような晴れ晴れとした作品でした
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