JunichiOoya

君が世界のはじまりのJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

君が世界のはじまり(2020年製作の映画)
4.0
大阪での千穐楽に滑り込みで見物(8月27日)。感想が今日になったのは原作の小説二本を図書館で借りるのに手間取ったせい。両方を読み終えたので、改めて。

なるほど、映画を見ながら「なんか繋がりが…」と、モヤッとした部分があったのは二つの話をてんこ盛りに盛り込んで力業でまとめたことも原因してたんだな、と。二作とも軽い作りでサラッと読んでしまえるけど、合体させるには、いかにふくだももこさんご自身の小説とは言え、随分と骨が折れたんじゃないかしら。

個人的には『ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら』パート(ショッピングセンター熱唱編)は少し「こなれ」が悪かったかなという印象。原作では純と伊尾の二人だった真夜中コンサートを四人の「合奏」にしたのもちょっと無理があったのでは?

映画としてはやはり江口のり子が圧倒的。小説にした時点でアテ書きでしょう、と思うくらい完璧に琴子の母親「楓ママ」になりきってた。

一方で舞台設定としての「大阪の田舎」は生かされず。原作では大阪と京都の境、向日町辺りなんだけど(確かにセメント貯蔵タンクあるわ)スクリーンには紛うこと無き北関東が映し出され、とりわけ大阪人は混乱すると思う。

ふくだももこさんは『21世紀の女の子』は別にしても『父の結婚』『おかしな結婚』と、一貫してジェンダーギャップへの拘りがあるんだろうな。今回はティーンエイジャーの片想い三角関係にジェンダーを被せて、見る側にしっかり主張の届く仕上がりだったと思う。

松本穂香さん、例えば松岡茉優さんみたいに上手すぎないところが特徴なんだと思うけど、そろそろ次のステージも見てみたい。
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