岡田拓朗

君が世界のはじまりの岡田拓朗のレビュー・感想・評価

君が世界のはじまり(2020年製作の映画)
4.3
君が世界のはじまり

希望と絶望、爆発の3秒前。

これは間違いなく自分好みの映画であると言えるとともに、過去を振り返りながら思い当たる節のある自分にとって、じわじわと刺さってくる映画でもある。

世界はいつでも「君」自身がはじまりとなる一人ひとりへの応援メッセージとともに、誰かにとっての「君」との出会いとそこからの関係から得られ育まれることが新たな世界のはじまりとなることが、青春におけるあらゆる人間模様が描かれながら示唆される。

その人にとっての「君」との出会いが転換点となり、新たな世界がはじまる。
そんなかけがえのない君とわかり合える瞬間を、僕たちは心のどこかで求めている。
一人だと生きている心地がしない。君とわかり合いたい。
切実な心の声が、静かに漏れ出て徐々にぶつかり合っていく。

スクリーンに映し出される彼ら彼女らを、理解できるかどうかという視点ではなく、感じ取るという視点で観ることから、生きていくことにおける人と人の関係のあり方や複雑性、そして妥協せずに踏み込むからこそたどり着ける関係のよさが実感できる。

その踏み込み切れるかどうかには、その相手にどれだけ心を許すことができるか、この話をこの人にならしてもいいんだ、話したいと思えるかが大事で、そこに至るまでにあらゆる心の壁が立ちはだかる。

それは他の人だとどうしようもできないその人自身が乗り越えなければならない壁。
誰かと関係を育むことや今までとは違う何かをきっかけに、壁を乗り越えるために必要なことを知ったり感じたりすることができる。

踏み込み切れず、素直になれない人間関係。
大きくなるにつれて、良くも悪くも自分をコントロールすることができてしまうから、ここまでお互いが踏み込むという機会をそれだけで損失してしまってる気がする。

そこから新たな世界が始まるかもしれないのに、傷つきたくない自分、そのままでも生きていけると思う自分に負けてしまって、人とぶつかることを避けがちになる。

人間関係において自らの意思を隠して踏み込み切れずに、我慢を強いられ続けている人たちにこそこの映画は刺さるのではないだろうか。

本作に出てくる人たちは、一人だと生きていくことすら危ぶまれるほどの危うさをそれぞれに内包しているように見える。
特に琴子、純、伊尾、業平は、いつ爆発してもおかしくない雰囲気を感じた。

でもこれは本当に今もどこかに生きているような人たちで、‪その存在を周りは見ようとはしない。

‪普通に生きているように見える人たちの中にも、表だけでは見えない怒りや悩みがある。
日常の中でそこにスポットが当たることはほとんどない。

いなくなったらいいのに。気が狂いそう。
他人事でなく誰もが思ったことがあるのではないだろうか。
僕らはたまたま何かに出会えて、踏み止まれてきているだけで。

そんな日常の中で必要なのは、同じ目線で会話することはできるが、見ている世界やタイプそのものが異なっている人との出会い。
それでも生きていたいと思える人との出会いが必要で、それこそがその人を変える強度を持っている。

世界をはじめるのは自分自身でも、そこには「君」の存在が必要だ。
その人を傷つけるのではなく、優しく踏み込み合っていける関係。

叫ばなければ やり切れない思いを
ああ 大切に捨てないで
人にやさしく してもらえないんだね
僕が言ってやる でっかい声で言ってやる
ガンバレって言ってやる
聞こえるかい ガンバレ

やさしさだけじゃ 人は愛せないから
ああ なぐさめてあげられない
期待はずれの 言葉を言う時に
心の中では ガンバレって言っている
聞こえてほしい あなたにも ガンバレ

ブルーハーツの「人にやさしく」が沁み渡ってくるし、刺さってくる。

自分の中にずっと残し続けていたい。
そして今を生きる若い人たちには特に観て感じて欲しい作品。

P.S.
今までの作品と比較しても、最も松本穂香さんが魅力的に映っていた。
まだ若いのに、表情であそこまで感情を表現できるのはやっぱり凄い!
でも本作はやはり中田青渚さんと片山友希さんが超絶魅力的で特によかった。
今回も今後に期待が高まるキャストばかりでした。