凜華

マグノリアの凜華のレビュー・感想・評価

マグノリア(1999年製作の映画)
4.5
『ファントム・スレッド』『ザ・マスター』『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』などのポール・トーマス・アンダーソン監督脚本作品です。
若いトム・クルーズの怪しい演技が上手すぎ!劇伴も最高で、エイミー・マンの歌う『ワン』『モメンタム』に痺れソッコーでサントラを買いました。懐かしい〜
今は亡きフィリップ・シーモア・ホフマンもいい味出しています。
人生で大切なことを人物対比や音楽で表現されていました。

以下、ネタバレになります。









許しがテーマですね。
蛙が降るのは、前半で語られている登場人物の苦しみや後悔、怒りなどの様々な想いを洗い流してくれている浄化の意味に思えました。
聖書では罪と贖いの意味があるそうです。

癌で瀕死の状態の父(アール)が、自分と母を捨てたことを恨んで許せず、そんな自分の過去を振り返りたくない(過去を切り捨てようとしている)フランク。

同じく癌で余命いくばくもない父(クイズ番組の司会者ジミー)に、幼い頃、性的いたずらをされたクローディアは、フランクとは逆にそんな自分の過去にとらわれ、トラウマになりコカイン中毒となっています。

アールの家に行ったフランクが、ほとんど意識のない父に「苦しいか、母さんも苦しんだ。死んでしまえ。」と初めは罵声を浴びせていたのが、「死なないでくれ」と泣き震えるこのシーン。トム・クルーズの迫真の演技に誰もが泣かされたのではないでしょうか。そして、父を許したことで自分をも許し救われたんです。

一方、アールは妻にも見捨てられ、ピストル自殺をはかろうとしますが“神”によって許しを受けました。

昔、クイズ番組「チビッコと勝負」の天才少年だったドニーは父のいいなりになり、賞金をとられ、人生をめちゃくちゃにされたと思い込んでいます。

勤め先の電気店をクビになるなど自暴自棄になったドニーは、その電気店にお金を盗みに入りますが、「いったい自分は何をやってるのか」と気づき、情け深い警官によって許しを受け、救われます。

同じく、現在クイズ番組「チビッコと勝負」の天才少年のスタンリーも、自分の賞金をあてにしている父がいて、クイズの途中で「僕は人形でもおもちゃでもないんだ!」とクイズの途中で飛び出してしまいました。
家に帰り、父親に「もっと僕を大事にしてよ」と、自分を愛してほしいと伝えるスタンリー。
この言葉はドニーと違って、父のいいなりにならず、子どもながらに無意識に自己主張し、自分の人生を決めていこうとしているようでした。

この映画は音楽がすばらしく、特に同じ曲を登場人物が同時に歌っているシーンは、“繋がり”を感じ、何故かとても印象に残っています。
そして、アールがこのクイズ番組のプロデューサーだったことで、全員が一本の線で繋がったのは、粋な演出でお見事!

「人は皆、悲しみや後悔、恨みなどいろいろな想いを抱えて生きていて、そんな意味で人は皆繋がっている。その誰もが弱さを持ち、愛を求めているからこそ、お互いに許し合おう。人を許すことは自分を許す(救う)こと。そして、過去を切り捨てることもせず、過去にとらわれることもせず、過去を含めたありのままの自分を受け容れよう。そうすれば、きっと乗り越えられる。
自分の人生は自分で切り拓くもので、運命は自分で創っていくもの。
だから後悔のない人生を精一杯生きようよ」

というメッセージを感じさせてくれる作品でした。
それができれば楽なんですけどね……。
凜華

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