GreenT

マグノリアのGreenTのレビュー・感想・評価

マグノリア(1999年製作の映画)
2.5
7900体以上のゴム製カエルが制作され、CGI も使ってカエルのシーンを撮影したそうで、本物のカエルは使ってないそうです。良かった。

9人のキャラの一日を追う群像劇なのですが、登場人物が多すぎて話が解りづらい。

iMDbの投稿で上手いこと言ってる人がいて、この映画の登場人物たちはみんな自分のことがキライ、自分の人生が不満、苦悩している人たちばかり。

この映画絶賛している人は「・・・でも最後、神様がいるってことを見せつけられ、絶望の中にも希望を見出す」って解釈してて、この映画ダメな人は「登場人物たちが『自分の人生はなんて辛いんだ!』って言ってるだけでなにも起こらない映画」と言ってる。

『ブギー・ナイツ』がすごい評価され興行的にも大成功したため、ポール・トーマス・アンダーソン(以下PTA)監督は、映画会社から「費用的にも内容的にも、なんでも自由に作ってよし!」って言われ、「こんなチャンスは多分二度と来ない」とめちゃ気合い入れて作った映画だそうです。

『マグノリア』の原案はこじんまりした話だったそうですが、完全なる創作の自由を与えられたPTAは、「サン・フェルナンド・ヴァリーの素晴らしさを伝える一大叙事詩を作りたい」と思い始め、役を与えたい役者もたくさんいて、そんなこんなしている内にどんどん話が膨らみ始めたらしい。

この映画撮った時、PTAは20代後半?私には「若気の至り」に見えました。色々考えて色々言いたい年頃の人に創作の自由を与えるとこういう映画ができるんだなあと。

制作裏話読んでも、劇中で多用されているエイミー・マンの楽曲を「そのままスクリプトにした」って言ってるくらい影響を受けていたり、ジョン・C・ライリーやフィリップ・シーモア・ホフマンにやらせたい役、PTA自身が映画監督になる前にクイズショウのアシスタントをしていた経験、自身の父親の死に際など、ありとあらゆるものを詰め込んだ映画みたい。

なのでこの映画が公開された当時は「・・・良くも悪くも、自分の作るベスト・ムービー」と言ってたそうなんですが、後年には、「頭を冷やして後20分削れば良かった」と言ってたそう。

でもこの気持ち解る。若い時好き勝手に作ったものって、大人になってみると「馬鹿だったなあ、自分」って思うけど、でもその熱苦しさがやっぱ好き!って感じで、この後メチャクチャ洗練された映画作るんだけど、やっぱり『マグノリア』が本人的には一番好きなのかも。

ちなみにこの映画はトム・クルーズが出ているんですけど、映画会社は「トム・クルーズ映画」として売り出そうとしてPTAとめちゃモメたらしい。PTAにとっては「サン・フェルナンド・ヴァリーの一大叙事詩」なわけですから、トムクル映画にされたくなくて、結局広報とモメて自分でポスターから予告編の編集までやったらしい。

この時のことをPTAは、「嫌な奴にならずに抗議する、ってことを学んだ・・・。ちょっと子供っぽかったもん。最初に議論になったとき、ちょーっとガキっぽい反応をしてしまった・・・。いきなり怒鳴っちゃった」と言ってたそうです。

PTAって若くして才能を認められ、すごい生意気って言われてた人だけど、後々こうして自分を振り返って反省できる人で好感持てます。

トリビアばっかり書いているのは、私個人的にはこの映画特に面白いって思わなかったからです。今になって観てみると、PTAのサン・フェルナンド・ヴァリーに対する思い入れも良く解かるし、子役とか、TVプロデューサーの家族とか、本人の経験してきた世界を描いているのは興味深かったけど、それ以上刺さるものはありませんでした。

一つ思ったのは、芸能界の人たちはみんな苦悩しているんだけど、警察官と介護士という、芸能人と対局の地味な仕事をしている人たちがこの「あたし辛いの〜」って言ってる人たちを支えているってことでした。

トムクルに関しては、演技とかはノリノリでやってて別に批判するところもないのですが、あのインタビューのシーン、あれって、トムクルそのものだなと思いました。本人もリアルで、訊かれたくないことを訊かれるとああいういや〜な感じで受け答えするんですよね。iMDbの投稿者で「トムクルはセルフ・パロディ」って言ってる人がいて「そう!」って思いました。

私PTA作品好きだけど、この映画はそれほどでもなかったなあ。
GreenT

GreenT