Yoko

マグノリアのYokoのレビュー・感想・評価

マグノリア(1999年製作の映画)
4.5
 ロサンゼルス、様々なわだかまりや問題を抱える老若男女の群像劇を描いた物語。

 PTA作品は『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』、『パンチドランク・ラブ』に続いて三作目の鑑賞。
とんでもない数の群像劇をどのように料理するのか、果たしてこの物語に収拾はつくのだろうかという不安半分、過去二作とウマが合っていた私としては期待半分が混じりながらの鑑賞。

 幾重にも重なった愛を、多少は強引ではありながらもよくぞ纏め上げられたなという凄さを感じた。
 ストーリーだけで見ても、親子愛、夫婦愛、恋愛、それぞれ一つずつではなく、それぞれの愛が二重三重に描かれる緻密な展開(老体の父親を二人も描くなんて並のストーリーでは出来ない)。
さらに、皆が腹に抱えているモノを淀みなく観客に説明した上で、劇中においてそれらをギリギリの部分ですり合わせる。
以下に述べる演出を抜きにしても、テーマ「愛」という共通項で多様な人物のドラマを纏め上げることが出来る力量に天晴。
 そして、これらの物語に必然性(現実世界ではなく作中世界における)を与える演出としての「合唱」と「落下」。
この二つの演出を観た瞬間、この物語はあくまで映画なんだという現実との境界線が浮かび上がるのだが(「落下」の明確さったらない)、作中世界の人物にとっては彼らの物語の必然性を高めるといったなんとも不思議な効力が発生している。
これはフィクションだと認識する現実の観客と、物語を現実として受け入れる劇中人物(フィクション)の構図を楽しまずにはいられない。
 役者としてはトム・クルーズが予想外に好演。
『ゼア…』のポール・ダノよろしく、狂信的な人物を演じたトム演技は今まで観た作品の中でNo.1かもしれない

 少しだけ中だるみはしましたが、これほど素晴らしい映画の魔法をかけてくれた180分強を蛇足とは言えません。
 PTA作品、今のところハズレがない!逆に怖い!
Yoko

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