ルサチマ

La France contre les robots(原題)のルサチマのレビュー・感想・評価

4.7
暗くなりかけた湖畔を年増の男が産業と革命について語りながら一歩ずつ歩く様子をやや後ろから膝上のミドルショットでそれ以上被写体に近づくことなく一定の距離を取って捉える手持ち撮影は、溝口健二の移動撮影を彷彿とさせる。一度暗転したのちに今度は明るくなった湖畔を同じく男が先程と同じ内容のセリフを語りながら一歩ずつ歩く様子を再びやや後ろから膝上のミドルショットで一定の距離を保ち続けていると一羽の白鳥がフレームの中に現れ、観客の視覚を異化させる。
2つのバージョンの移動撮影は、1945と表示されたテロップを軽やかに超越し、過去について語る男を現代の時制で撮影したものであるにもかかわらず、それを観客が1945年のこととして認識するという映像のハッタリをそのまま提示してみせたうえで、明らかに時間帯の異なる同空間での同じ移動時間を伴う撮影によって、同空間で有り得たかも知れぬ1945年のある時間を形式化してみせるという試みを実践する。

現代を生きる映画作家として、最も鋭角的な知性によって対象と対決する人だった。「映画とは他者の夢を物質化すること」という言葉に突き動かされて映画制作を細々と始めた一人として、その不在は余りに大きくショックだ。安からに。RIP Jean-Marie Straub
ルサチマ

ルサチマ