えむ

幸せの答え合わせのえむのレビュー・感想・評価

幸せの答え合わせ(2019年製作の映画)
3.5
息子も成人して家を出た熟年夫婦。
それぞれの思う幸せの形のズレが修正されぬままそこまで来てしまってついに別れが・・・というストーリー。

なんというか、ひたすら気が重くなる映画でした。
そもそもの質が違う二人が、最後の最後まで結局はすれ違ったまま溝は埋まらない。

愛されていると信じてきた妻、信じさせてきた夫、それが露呈したわけだけれど、その実二人とも相手に寄り添おうとしていないのだから無理だよなあ・・・って思いながら、延々それを見るのはちょっと辛い。

妻の方は愛している愛されていると思っていても、それは半ば信じ込みと執着のようなもので、常に賢く「こういうのが理想」ってコントロールしようとして、結局は本当に夫の気持ちを想像したことがないふうにも見えるし。
(それはラスト近くで浮気相手との愛の巣を見て「あなたはこういうのを望んでいたのね」と初めて気づくことで顕著に現れる)

夫の方は寄り添うのではなくただ「同調して誤魔化して逃げる」のだから、溝は深まるばかり。

夫のやり方は誤魔化し続けて最後は言い逃げって感じでちょっと卑怯に思えるのだけど、妻の方にもどうにも同情できない残念なワタクシ・・・


ちゃんと言いたいことを伝えてくれないとわからない、それは正論だし、コミュニケーション不足のすれ違いの解決法のセオリーだけど、そもそも言おうとしても、ちゃんと聞いてくれてる感じがしない人と、言えない人との間でそれをやるのは二人ともがきちんとお互いの方を向いていないとできないことだと思う。

なんだろうな、この見ていてモヤモヤと気持ち悪い感じ・・・
と思ったら、「変に高い意識」と「同調」はあるのに、肝心の「共感」が感じられないからなんだろうな。

この二人が揃って「こういう考え方もあるのか」という共感(協調や同調でなく)をして相手に寄り添う素振りがあったなら、ここまでにならなかったと思うし、個人的には修正も効かぬまたひたすら延々引っ張られるのは見てるだけ辛いって仕上がりでした。

だからこそ、語り部である息子のように「最高のパパだ」「最高のママだ」とどちらにも共感をしてその個性を認める、そこに落とし込むしか、終わらせようがないよね・・・


原題の「HOPE GAP」は場所の名前だそうだけど、そのまま「お互いに思う希望の形のギャップ」がひたすらギャップのまま終わってしまった映画でした。

俳優陣は好きだし、出来が悪いとも思わないけど、それ以上でもそれ以下でもない及第点、イギリス映画の物悲しさやトーンは好きだけど、この作品はあまり好みには合わなかったなあ・・・という印象でした。
えむ

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