Yoshishun

快適な生活のYoshishunのレビュー・感想・評価

快適な生活(1989年製作の映画)
4.5
7/6に公開を控える「アーリーマン」の製作スタジオ、アードマンが89年に製作した短編アニメーション。アカデミー賞受賞作でもあります。

動物園で暮らす動物たちにインタビューするだけの内容、なのに面白い。

まず撮影方法が面白い。実際にインタビューした時の音声を、口の動きをも正確に表現するリップシンクを用いて動物たちに話させています。本当は人間が話していたことを、動物園の動物たちが話しているかのごとく錯覚させます。しかも背景やセットと見事にマッチしてるから単純に凄いんですよ。

次に、随所に散りばめられたブラックユーモアや物理的なギャグが面白い。ブラックユーモアに関してはアードマンのお得意とするものだから今回は割愛、作中でインタビューを受ける間、インタビューを受けてない動物たちの行動がイチイチ愛らしい。あの鴨みたいなやつ、後ろにいたの偽もんだろ。

最後に、本作に込められたメッセージが奥深い(かも)。檻に閉じ込められ閉鎖空間の中自由を奪われた動物たちの主張が、今の動物園への皮肉にしか聞こえない。何もしなくてもエサは手に入るし、何より天敵に襲われる心配もない。心配することなく生活することができる。しかしその一方、隔離されていることが災いし、自由な生活を送ることができない。広大な大地を全力で走ったり、広い海を自由に泳いだり、自分の食べたいものを食べることができない。実は劇中の動物に限ったことではなく、現実の一部の人間にも共通する。自分の望む生活ができない、大切な人と一緒に生活ができないといった人々は少なからず存在する。社会の檻から飛び出し、好きなように生きていくことこそ、本当に快適な生活であるように思えた。
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