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もだえ苦しむ活字中毒者 地獄の味噌蔵のshxtpieのレビュー・感想・評価

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Filmarks に感想を書こうと思ったら、作品が登録されていなかったので、こちらに書き記す次第。

……という書き出しで note に書いたのだけれど、 Filmarks に「登録して!」とメールしたらちゃんと登録してくれた。やったね。以下、 note から転記。

黒沢清が撮った「もだえ苦しむ活字中毒者 地獄の味噌蔵」と「よろこびの渦巻」を見た。どういった企画なのか、 DVD を見るだけではよくわからないことのほうが多いのだけれど、どうやら「 DRAMADAS 」というシリーズのひとつらしい。「 DRAMADAS 」は 1990 年から 1993 年まで、平日の深夜に関西テレビで放映されていた 15 分の番組で、水谷俊之、小中千昭、池田敏春、万田邦敏、細野辰興、平山秀幸、西山洋市、廣木隆一、是枝裕和らが監督、演出をしていた、とのこと(以上、 netfilms さんの記事から)。企画自体は、田中猛彦や西畠泰三によるもの。ちょっと調べてみると、気になる作品がいくつかでてきた。

で、この2本は、椎名誠の原作による、黒沢清が監督した作品である。ただ黒沢が撮っているからというだけで、なんとなく新宿のTSUTAYAでDVDを借りたのだった。

わたしは椎名誠が書いたものは、まったく読んだことがない(そして、それを恥ずかしいと思ったこともない)。なので、彼がどんな作家なのかまったくわからないまま、まず「もだえ苦しむ活字中毒者」のほうを見たのだけれど、なるほど、突飛な舞台設定とキャラクター造形と超現実的なユーモアで話しを進めていく書き手なのか、となんとなく思った。超適当な想像。

ストーリーを書くのはだるいので措くとして、5話構成のドラマである「もだえ苦しむ活字中毒者」は、各話のイントロダクションを助演の大杉漣が担当しており、超早口の、起伏のない発声によるナレーションで、だーっとあらすじが語られる。短い放映時間という制約への、ささやかな抵抗なのだろうか。ここでは、視聴者のことは無視されている。

主演は、「 CURE 」にも出演している諏訪太朗。大杉が黒沢映画の常連俳優であることは、説明不要だろう。なんだか変なしゃべりかたのあやしい男がでている、と思ったら、加藤賢崇だった。

「制作 関西テレビ放送 ディレクターズ・カンパニー」というテロップを見たときに、得心がいった。「もだえ苦しむ活字中毒者」にしても、「よろこびの渦巻」にしても、音楽や演出など、随所にディレカンらしさがにじみでていて、「神田川淫乱戦争」や「ドレミファ娘の血は騒ぐ」とムードがそっくりなのだ。

ディレカンの作品といえども、結論を言ってしまうと、「もだえ苦しむ活字中毒者」は、すぐれた作品、たのしい作品だとはいいがたい。画には黒沢らしいキレがなく、なんとなく撮っている感じがしてしまう。これには予算や制作期間、スタッフの問題も関係しているのだろうか。

撮影はだれなのだろうかとエンドクレジットを見ていたら、「地獄の警備員」の根岸憲一だった。編集のクレジットはなかったのだけれど、ファイナルカットは黒沢になかったのでは、と思った。なんだか、編集もおざなりなのだ。黒沢は現場を取り仕切る以上のことはしていないような気がした。

黒沢のフィルモグラフィにおいては「スウィートホーム」( 1989 年)の直後にあたる 1990 年の「もだえ苦しむ活字中毒者」。けれども、あんまりたのしめなかった。そんな本作についてググっていたら、椎名誠と目黒考二によるこんなやりとりを見つけた。ちょっとほほえましい。

目黒 ええと、この「もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵」は 1990 年に関西テレビでドラマ化されてるよね。関西だけの放映だったようだけど、テープがおくられてきたはずなんだけど、見た?

椎名 よく分からなかったなあ(笑)。

目黒 オレもよくわからなかった(笑)。黒沢清のカルトドラマで出世作と言われているらしいけど。

ただ、1話の冒頭、大杉が諏訪を追いかけるシーンにいいショットがあった。カメラは曲がり角をすこし上方から、V字に撮れるように据えられている。諏訪と大杉は画面右から走ってきて、中央下にきたあと、左上へと消えていく。V字の底部、つまり曲がり角の屈曲部分には真っ赤な看板があり、「L’ENFER(地獄)」と書かれている。ゴダール映画かなにかへのオマージュだろうか。元ネタがわかるひとはおしえてほしい。

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