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タイヨウのうたのtetsuのレビュー・感想・評価

タイヨウのうた(2006年製作の映画)
5.0
今日は母の日。
というわけで、今回は久しぶりに亡き母との思い出についても書こうと思う。
(終盤、辛い思いをする方もいるかもしれません。また、クライマックスのネタバレが含まれておりますので、苦手な方はお気をつけください。)

今や「ちはやふる」でお馴染み、
"小泉徳宏"監督の長編デビュー作。
高校時代から、本作の主演"YUI"さんのファンだった兄のおすすめもあり、観賞。

海辺の町に住む少女"雨音薫"
彼女はXP(色素性乾皮症)という病気のため、夜以外は外出できず、日中は室内から外の様子を見ることが日課になっていた。
ある夜、駅でストリートライブをしていた彼女の前に青年が表れる。
彼の名前は"藤代孝治"
薫が窓から眺めていた青年、その人だったのだ...。

作中では、デビューした当初の未完成なYUIさんの様子が映し出されており、それが本作の主役"雨音薫"に見事にリンクしていた。
人によって、
彼女の未熟な演技や、一種、恥ずかしささえ感じる恋人との初対面シーンに嫌悪感を感じてしまう場合もあるかもしれないが、僕はそこが良い意味で邦画特有のダサさになっており、本作の主題歌に登場する"かっこよくない優しさ"になっていたと思う。

この数年後、
YUIさんは引退。(その後、FLOWER FLOWERのyuiとして活動は再開するのだが...。)
事務所の意向で、自分の歌いたい歌が歌えなくなったことが原因だと語る兄の話を聞き、YUIさんのプロモーション映画でもある本作は、彼女にとって黒歴史なのでは、と思っていたが、リメイク版が公開されている今、肯定的な意見を発信している彼女を見て、少し安心した。

ところで、
話は僕の母へと移る。

この作品の登場人物は、
主人公が余命宣告された後、
残された時間を大切にすることに決める。
幸いなことに、僕らの家族も、
母がガンを宣告されてから約5年ほどの期間があり、彼女との時間を大切に使うことが出来た。

本作の主人公"雨音薫"は、人を照らすような"タイヨウ"の様な存在だったが、僕の母も、そんな存在であった。
最後の最後まで、笑顔を忘れず、病気であることも忘れてしまうくらい明るい人だった。

この作品の終盤、
とても印象的なセリフがある。

「私、死ぬまで生きるって決めたんだから。」

僕の母は亡くなる1週間前、
僕たち、兄弟と花火大会に行く約束をした。
入院することになったのは、それからすぐのことだ。
結局、花火大会には車イスに乗って行くことになり、なんとか一緒に見ることができた...。
しかし、それからすぐ、母の容態は悪化、
そのとき、担当医の方が言っていたことによると、母の体は普通なら数日前に死んでもおかしくない状態だったらしい。

母の「花火大会に行きたい」という執念、いや、「死ぬまで生きる」という思いは、病気というものでさえ、飛び越えてしまった...。


「死ぬまで生きる」

その決意は、
自分のためだけでは成し遂げられないのだと思う。
周囲の人への愛がある人だからこそ、言える言葉だと...。

本作のラストシーン、
雨音薫の思想や精神は、周囲の人達の心の中で生き続けていく...。
僕にとっては母がその存在だ。
どんな苦境にたっても諦めない、
そして、周りの大切な人のためにも生きる。
そんな母の笑顔を、
これからは僕が与え続けるようになりたい。

そんなことを思い出させてくれる映画だった。


参考
YUI『I remember you-short ver.-』
https://youtu.be/DWPfrWW-afo
(公開後、YUIさんが発表したある曲のMV。本作はフィクションであり、実在の人物は登場しない。しかし、"雨音薫"という存在は"YUI"さんの心の中で生き続けていたのかもしれない。)
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