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カポネのTEPPEIのレビュー・感想・評価

カポネ(2020年製作の映画)
1.9
やはり「クロニクル」の成功はフロックだったのか…と悲しくなって、ますますジョシュ・トランク監督に失望してしまった。もはや伝説の事故映画である「ファンタスティック・フォー」で干され、スター・ウォーズもクビになった彼は脚本・編集・監督と、もはや大手スタジオには好き勝手やらせねぇとたかを括ったのか、「カポネ」を製作した。

アル・カポネと聞くと、やはり全盛期スカーフェイスぶりを描くギャング映画を思いつくが、本作は脱税の罪によりようやく投獄されたカポネのその後の晩年を描く。
新しい取り組みで、どんなハードボイルド展開かつヒューマンドラマを見せてくれるか期待も膨らみ、さらにカポネを演じたトム・ハーディの怪演も実に楽しみにしていた。

結果は悪い意味で番狂わせ。文字通り、クソを投げつけられた。梅毒に苦しむカリスマ性ゼロのクソ漏らし爺さんの姿を延々と観るのだ。そこまではいいとして、晩年のカポネを全く魅力的には描けていないことが難点だ。粗っぽい編集も手伝い、ジョシュ・トランクが描くカポネは酷く退屈で無意味な暴力描写に苦しんでいる。幸福を奪ってきた男が、奪われる番になる滑稽さは活かしきれず、それどころか全然新鮮味のない妄想世界に付き合わされて、カポネが何に苦しんでいるかも分かりづらいのでキャラクターとして全く面白みがない。主役なのに。

梅毒に侵されたカポネをまるで別人のように見えるくらい熱演したトム・ハーディが無駄遣いすぎて、どの映画賞もそりゃあスルーしちゃうわけだ。この浮きっぷりは「J・エドガー」のレオナルド・ディカプリオ以来ではないか。全体的に味っけがないと言うか、こんなビッグコンテンツをこんなにつまんなくして良いのかと心配になるほど興味のない話が続く。その他モブや、主要キャラクター達の背景や信念も伝わらず、雰囲気だけ勝負させた映画である。

ひと味違った題材で勝負したんだろうけど、やっぱり映画としてものすごい地味。これならトム・ハーディでギラギラして残忍なカポネを観たかった。ボケ倒した爺さんの晩年を描く「だけ」じゃなくて、やはりカポネとはどんな人物なのかをしっかり魅力を伝えていかないとスタートがどんより過ぎて、どこまで根暗なんだよジョシュ・トランク…肩に手を置いてやりたい気分だ。

総評として、ストーリーがお粗末すぎる「カポネ」はトム・ハーディの熱演も虚しく、ジョシュ・トランク監督のパワー不足、リサーチ不足が非常に顕著な一本だった。ジョシュ・トランク監督、本当にハリウッドから仕事なくなるんじゃないのか…。「クロニクル」のような衝撃を期待したい…というかもうポストM・ナイト・シャマラン監督な感じで開き直ってもいいんじゃないかと思っている。
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