えそじま

アルチバルド・デラクルスの犯罪的人生のえそじまのレビュー・感想・評価

4.5
作中アルチバルドが死神だと信じるオルゴールの魔力は、客観的において(あるいはメタ的に)偏執に基づく空想に他ならない。性と死の同居を前にした異常な感情を最大の悦びとする偏執性。外観的にはそれが足へのフェティシズムとして現れているが、ブニュエルや他周囲のシュルレアリスト達にとって、死体が朽ちる瞬間とは死に顔に生を宿らせる最後の瞬間だという。溶解される女性のマネキン人形に無垢な子供のような視線を送るアルチバルドは、ブニュエルにとって愛らしい共犯者であるのだと思う。

また作品が内包するテーマは、死の無為性、それが齎す現実への不可思議な作用だと思う。ちなみにブニュエルの自伝によると、窯で燃やされるマネキン人形のモデル女優ミロスラバ・ステルンは、本作の撮影後、恋の悩みによって自殺し、また本人の遺志で火葬に付されている。本作はブニュエルという人間の核に迫る(迫ったつもりになる)上で、重要な鍵を握る作品だと思う。※1957年時点でのロメールはこれをブニュエルのベストとして挙げている。
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