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アルチバルド・デラクルスの犯罪的人生のpikaのレビュー・感想・評価

4.5
あー面白い!ホント面白い!!
ブニュエルによる「したいけどできない」映画の一本で、今作は「殺したいけど殺せない」男の話。

他の「したいけどできない」作品は生存欲求だったり本能だったり現状脱却だったり、求める理由を状況から読み取るものであったが、今回はキャラクター発信のフェティシズムなどの欲望を解消するドラマになっていて、コミカルでシンプルな構成ではありつつもブニュエル後期の性的倒錯に近いものがある。「欲望のあいまいな対象」や「昼顔」など。

少年時代に家庭教師が目の前で事故に遭って死んでしまった過去から「人を殺したいと願った自分に興奮する」と言うフェティシズムが芽生え、過去の事件の際側にあったオルゴールを古物商で見つけた時、忘れていた殺人欲求を思い出し、それからと言うもの自分が「殺したい」と願った相手が次々と死んで行く展開に自分が彼女たちを殺害しているのだと思い込むようになる。足へのフェティシズムもオプション付けてくるあたりはさすが。

なんてことはない妄想と現実の入り乱れな娯楽作なんだけども、ソックリなマネキンを相手に見立てて欲望を解消しようとしたり、様々な女性との出会いや衝動、計画から失敗までの流れがコミカルながらも緊迫感もあり、アルチバルドの淡々とした衝動が可笑しくて前のめりになって夢中になる面白さ。
殺人欲求が叶わぬまま相手が死んで行く展開は、普通の人たちが些細な違反や犯罪スレスレな行為などを行ってしまう罪悪感、犯罪を犯してみたいという好奇心や性的欲求などの妄想による背徳感まで、罪を犯すまでは行かなくとも潜ませている欲望を突くような、否定や肯定をするでもなく「みんな多少なりあるでしょ」と誰しもが持つ本能だとばかりに娯楽作へと昇華しているブニュエルの視点やアイディア、演出力に感嘆する。

ラストの取って付けたようなエンディングなんかもイヤらしくもたまらない感じで、娯楽作だからこう終わればこんな内容でもオッケーっしょ!?とでも言っているようなブニュエルらしい皮肉にニヤリとさせられる素晴らしい後味。傑作!!