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カレとカノジョのdm10foreverのレビュー・感想・評価

カレとカノジョ(2014年製作の映画)
3.6
【運命】

地球上で、いったいどれくらいのカップルが「運命の相手」に出会えているのだろう?
きっとゼロではないのだろう。
それこそ、ひょっとしたら「君の名は」みたいな不思議な運命の体験をしたって人もいるかもしれないし、もしかしたら、折角出会った運命の人とすれ違ったままになっているっていう人だっているのかもしれない。

「まぁ、運命なんてただの結果論だよ」

大学時代の達観した友達の名言。
結果的に「~こういう運命だったのさ」で全ては片付いてしまうし、それを言い訳にしながら人間は生きていくしかないんだって。
逆に最初から「僕はこうなる運命です」って言える奴が何処にいる?と言われて何も言い返せなかった。
くぅ~、理解できたような、納得できないような・・・(笑)。

それから時は過ぎ・・・
僕も社会に出て、2、3発の恋もして、ドラマほどの「燃え上がるような恋愛」ではなかったけど、好きな人が出来て結婚して、犬を飼って、子供が出来て「家族」が増えて、そして今に至る・・・。
それこそ、それは僕の「ここまでの運命という結果論」なのかもしれない。
そしてここから先の運命はやっぱりわからない・・・。

このお話はある一組のカップルの出会いから別れまでを紡いだ短編作品。
といっても7分しかないので「花束みたいな~」のように丁寧に描けるわけでもなく、「彼の部屋(の天井)から見つめ続ける映像だけの物語。
主観は「彼」(タイトルもmeは小文字なのにYouが大文字という憎い付け方)。
初めて自分の部屋に好きな女の子を招き入れ、ちょっとずつ距離が近くなり、二人は結ばれる。
やがて二人はいつも一緒に過ごすようになり「当たり前の日常」に幸せを感じる。
しかし、徐々に些細なことから口論が堪えなくなり、ついに彼女は部屋を出て行く・・・。

二人の心情(特に彼目線)を「部屋の散らかり具合」で表現するのは面白かった。
初めて彼女を迎え入れるときはベッドのシーツのしわ一本見逃さないくらいに緊張していたのに、徐々に彼女がいるのが当たり前になってくると、部屋を片付けなくなる。
(別にいつものことだし・・・)
センサーで反応して喋るぬいぐるみは彼の「初心」そのもの。
どんな時も変わらず同じ音声を鳴らしていた。
でも喧嘩が絶えなくなった頃、彼は八つ当たりでそのぬいぐるみを窓から放ってしまう。
もう最初の頃の気持ちはこの部屋のどこにもなくなってしまう・・・。


で、最初の話。
多くの男女が「運命の相手」に出会えていないとして、それでも一生懸命「運命の相手」を探しながらも「もしかしたら、この人は違ったのかも・・・」ってなっちゃう時ってきっとあると思う。

季節で例えるのなら、出会った時は「目の前にパッと花が咲く春」のような時期で、目に映るもの全てが新鮮に映る頃。そして二人はお互いに距離が近づき「身も心も開放的な夏」を迎える。でも・・やがて、街中の色が原色からセピア色に変わり始め「楽しかった夏の思い出ばかりが蘇る秋」になる。そして、凍える寒さに震えながら各々厚着をして、もはや「相手の体温を知ることすらなくなる冬」になる。

もし、恋愛を季節で例えるのなら、ピークはどこなんだろう?

やっぱり「燃え上がる夏」?
でも、実はずっと燃え続けるのって精神的にも体力的にも大変で、だから夏って案外「短い」。
で、秋になって火照った身体と心が一旦落ち着いた時、もしかしたらそこがピークアウトなんだろうか。

じゃあ、長く続いているカップルは「ずっと夏のまま」ってこと?
きっと違う気がする。
秋になったとき、「楽しかった夏を懐かしむ」のではなく「静かに変わっていく景色」もまた素敵な景色だってお互いが思えたら、その先の冬もそして次の春も新鮮な気持ちのままでいられるのかもしれない。
そして、意外とそういうカップルのピークって実はもう「春」には来ているのかもしれない。
早い段階から二人に起こる喜びも悲しみも二人で共有できるようになっているんじゃないかなって。

それが運命の相手ということなのかどうかまでは僕にはわからない。
でも、運命を共有するっていう覚悟が出来ている二人にとっては、これから起きるどんなことも「僕たちの運命」として語れるんじゃないかな。
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