灯台守(とうだいもり)の夫と
連れ添う妻の半生を描いた、1957年の作品。
灯台は遠くまで見通せるが、
すぐ真下は照らすことができない。
その真下で行われている日常に
スポットライトを当てたところが面白い。
戦前、戦中、戦後と物語は進むが、
焦点はあくまで夫婦や家族の出来事として展開するのがいい。
目線が低いんだ。
佐田啓二が高峰秀子に「バカ」という言葉を使うのを
ためらっていた、と独白する場面が特に印象に残った。
これは「何でも言い合える関係」がいいわけではなくて、
『親しき仲にも礼儀あり』という言葉もあるように、
最低限の思いやりがなければ関係は破綻してしまう、
ということを伝えてくれる。
高峰秀子は「はじめてバカと言ってくれた」と喜ぶ。
やっと距離を縮めることができた、と認識したわけだ。
途中のシーンで、
フィルムが傷んでいた部分があったのが残念だった。
デジタルで修復できないものか。