ユミコ

喜びも悲しみも幾歳月のユミコのレビュー・感想・評価

喜びも悲しみも幾歳月(1957年製作の映画)
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フォローさせていただいている方からおススメされ鑑賞。彼女はこの作品がキッカケで旧作邦画にハマる事になったというお話を以前に伺っており期待特大でした。やはり期待通りの素晴らしいものでした。木下監督さまの作品にはお気に入りが多いけれど今作もまた好きな作品の仲間入りとなりました。
主演のご夫婦役である佐田啓二さまと高峰秀子さまは、お2人以外に有り得ないと言えるハマり役。舞台は国内の北から南までの10以上の地域。場所は変われど全てが灯台のある岬、島ばかりでロングショットが多く、どの地方の灯台の光景も時代や季節が移り変わってゆき、全く違う表情だった。まるで灯台に衣装があるかのよう(印象深かったのは戦時下のカモフラコス)。
主人公一家、とりわけ夫婦の、結婚〜老い迄の25年間が描かれていた。こちらは夫婦だけど野村監督の「女の一生」でも、主人公が結婚〜お婆ちゃんになるまでの一人の女性の物語で、丹念な老けメイクと老け役な点も含めて共通項が多かったので思い出された。
過酷な灯台守という職業と、そして同じくらいの過酷な生活を強いられる妻と子供たち。転勤ばかりで日本中を渡り歩かねばならなく、その場所の殆どが、灯台がぽつんと立っているだけの何もない所。TVなんてないし人もいないし気も狂わんばかり。実際、気が狂った者もいた。子供たちも友達のいない地で無口、勉強にも支障を来すしで、良い面など何もなかった。それでもひたすらじっと我慢して日々の生活をおくらねばならない。沿岸の変わりやすい天候、時には雪深い土地、互いに罵り合う事もあったり… そんなこんなで年月は過ぎて行くのでした。涙する場面が幾度もありました。
節目ごとに流れる、タイトルと同名のテーマ曲が染みました(木下監督さまの弟である木下忠司さま作詞・曲)。
終盤にはすっかり白髪の増えた夫婦と成長した子供の姿がありましたが、こんな風に白髪頭になるまで生きられなかった啓二さまを思うと、物語とはまた別の涙がこみ上げてきちゃいました。
ユミコ

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