ぐち

ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれからのぐちのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

じんわり良かった〜〜〜
編集もオシャレ。

間に章立てのように愛についての偉人の言葉が挟まってる構成も良いんだけど、最後に主人公自身の言葉が引用されてるのが良かった、と思ったら本当の最後に引用されるのがemojiで(複数の出典元による)ってなるの上手いな〜

はじめの方のラブレターで「まだ自分の言葉で愛を語れない」と言っていたエリーが(今思えばエリーに代筆を頼んだポールも、私も人の言葉に頼ると言っていたアスターも)自分の言葉を獲得するまでの話だった。愛についてだけでなくあらゆることについて。子供から大人になる時期の高校生が、自分を獲得していく話。

元々ラブストーリーで強引に男が女にキスして「キスして欲しかったんだろ」みたいな顔するのが好きじゃなかったんだけど(良い雰囲気になってキスするのは良いと思うから難しいところなんだけど)、ポールが勘違いしてエリーにキスしようとする、からのアスターの彼氏がエリーが自分を好きだと勘違いしてアプローチしにくる、っていう『ラブストーリーにおける同意のないキスシーン』を皮肉ったようなクソ男ムーブが続くのブラックジョークとして面白かった笑。
なのでエリーからアスターへのちょっと強引なキスシーンはどう捉えて良いのか正直わからなかった。
ポールとアスターのキスシーンも肯定的な描かれ方だったし、愛における様々な事象を否定も肯定もせずに描いてるのかな。これは良いけどこれはダメ、みたいな線引きをしてないのかも。
(追記:いや待てよポールとアスターのキスについて、最初は映像では見れなくてポールの口から語られるだけでエリーも「彼女はなんて言ったの?」て同意を取ったのかって聞かれてる。ポールはして欲しそうな顔をしてたって言ってたけど本当に彼女が望んでたのかはわからない。その後も交際が続いているから嫌ではなかったのかもしれないけど…で、2回目のアスターからポールへのキス。あの時のポールのちょっと戸惑った顔。あの時にはエリーへの気持ちに傾いてたんだよね。ポール的には今はキスするところじゃなかったのかも)

アジア系でゲイで文学少女の主人公は典型的な「クラスの中心になれない子」だけど、“アメフト部”のポールに(補欠)って注釈ついちゃう(しかもアメフト部がクソ弱い)ところとか、特に“美人”というカテゴリーのせいで抑圧されるアスターのキャラクターとか、定型から少し捻ってあるのが現代的。
それだけに田舎の描写が皮肉を込めてあるとはいえちょっと定型すぎるかな?コメディなのでカリカチュアしてるってことなんだろうけど。アスターの周囲の取り巻きの「人気者」とか「女子高生」のラベリングが極端すぎる。「オシャレや異性にしか興味ない頭空っぽの高校生」みたいな。
オシャレが好きで文学に興味なくて恋愛の話ばっかして何が悪いねん。
主人公たちとは合わないだろうけど、ちょっと悪意を持ってカリカチュアされすぎてたきらいがあるかな〜と。

ポールはアスターにアプローチかけときながらエリーにキスしようとしたけど、アスターも彼氏と別れないままポールとお試しみたいな感じで付き合いだしてるし、アスターの彼氏は結婚前のお遊びみたいな感じで彼女がいるのにエリーに粉かけにくるし、みんななんかごっちゃなんだよね。エリーはすごく一途だったんだなぁこの中で見ると。
そのごっちゃな感じをごっちゃな感じのまま描いて、最後まで固定しなかったのも良かったな。

それが確かに愛でも、愛じゃなくても、愛を見誤っていても、まだ愛かどうかわからなくても。
数年後には信じられるものがきっと見つかる。
面白いのはこれから。
ぐち

ぐち