たく

ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれからのたくのレビュー・感想・評価

4.0
5/1からNETFLIXで配信開始されて早くも話題の本作。
重い題材を爽やかな青春学園モノの演出に乗せつつ成長物語として描いてて良かった。

アメリカのとある田舎の高校で唯一アジア系で差別されつつも、その文才からレポート代筆で小金を稼いてる孤独なエリー・チュウ。彼女を演じたリーア・ルイスの幼さと知性が同居する表情と、大人っぽい低めボイスが本作の大きな魅力だね。
「シラノ・ド・ベルジュラック」的なエリー視点の叶わぬ恋の代筆からの三角関係がベタ展開で、プラトンの「神に引き裂かれた自己の片割れを求める心が愛の本質」説をどこか求めてるエリーと、素朴な神への信仰を持ってる二人との関係が教会シーンで一気に昇華するのが象徴的。サルトルに示される「実存」の乗り越えが核になってるんだね。

英語をうまく喋れないエリーの父が、ボヤっとしてるようで全部分かってる感がなんともいい感じ。「カサブランカ」「ベルリン天使の詩」「街の灯」「フィラデルフィア物語」「ヒズ・ガール・フライデー」などの名作をただ観てるようでいて、まだ本当の恋愛を知らないエリーに人生の本質を密かに教えているような感じが印象的だった。駅の別れで出発列車を追いかけるいかにもB級映画の男をバカにしてるエリーがラストシーンの伏線になってるのもジーンときたね。

エリーとアスターが繋がるきっかけとして出てくる「日の名残り」の映画版はアンソニー・ホプキンスで一番好きな作品で、スティーブンスがひたすら本心を隠してる孤独がエリーに重なる。

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(2020.5.15再鑑賞)
2回目観てジーンと来た。
冒頭のナレーションで「これは恋愛モノじゃない」って宣言してる通り、ほろ苦い感じで3人とも一歩踏み出す成長物語で一回目より泣けた。ピンポンしながら会話を交わしていくシーンとか良かったね。
デートシーンでポールを装ったエリーが「君はいい骨格をしてる」って褒めるのはの「ペーパームーン」?トリクシーがアディの骨格を褒めて"body structure"って言葉を何度も繰り返す印象的なシーンがあるんだよね。あと廃電車のシーンとエリー父とポールのシーンで雨音がしてるのが意図的な演出に感じた。