うっちー

ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれからのうっちーのレビュー・感想・評価

3.5
 最初から雰囲気は良いが、何度か繰り返し観てその味わいが滲みてくる、そんなスルメ系の味わいがある映画。ただ、最初に観た時は細部に分かりにくい箇所があった(駅がそのまま家みたいなエリー宅とそのお父さんの仕事など)。

 ラブレターの代筆を頼まれた中華系の地味だがクレバーなエリーと依頼主のポール
(体育会系だけど軽薄でも威圧的でもなく、かなり誠実で決してバカじゃない=とてもいい青年)、そしてポールが心を寄せる美女、アスターとの不思議な三角関係を描く。
 手紙の主がポールだと思っているアスターとポールのぎこちないやりとりと、その陰で奔走するエリーのライトコメディー的な始まりから、次第に三者の心が変化し、そして気づきへと発展するプロセスを、丁寧かつ優しく描く。文学少女なエリーとアスターが愛する本や映画のチョイスが渋くてセンスが良く、またエリーの父親が毎晩観る映画たちも名作揃い。作品に知的な味わいを加味している。

 それぞれが本来の気持ちに気付いても、性急になることなく、最終的には三者三様に進む道を決めていくラストも爽やか。

 確かによく考え、練られた脚本だけれど、それだけに今の私にはエモーショナルな側面に訴える場面や展開がなく、少し物足りない感が。俳優さんはそれぞれ好演だけれど、エリーよりアスター役の女優さんが印象に残った。スクールカースト上位ななはずなのに、つるんでいる仲間には飽き足らず、ひとりの時間を得るために夜遅くまで起きている。孤高でありながら、ふつうに親切でバリアを張ったりしない美女。その雰囲気にぴったりな女優さんで、素敵だった。
 また、個人的には、アスターとエリーの手紙やメッセージのやりとりを見て、自分の足りなさを自覚したり、エリーとそのパパのためにソーセージをもってきたりするポールの謙虚さとかわいさがツボでした。あの絵文字メッセージもかわいい。
うっちー

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