Aoi

ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれからのAoiのレビュー・感想・評価

4.1
見る前から「絶対好き」と確信できる作品に久々に出会った〜

中国系アメリカ人のエリー・チュウは成績優秀な女子高生。特に文学の才能に優れ、レポートの代筆で稼いでいた。エリーはある日、アメフト男子のポールにラブレターの代筆を頼まれる。しかし、その相手はエリーが秘かに思いを寄せているアスターだった。
「1通だけ」と始めた代筆から不思議な三角関係に発展していく。


タコス・ソーセージと秘境温泉

ノスタルジックな田舎町と現代のテキスト文化の融合した独特の雰囲気がとても好みだった。

思い人のアスターは、一見みんなが羨む美人で人気者だが、実は文学と芸術をこよなく愛する隠れた一面があった。

エリーとアスターが文通だけで精神を通わせていく過程が、まさにもう一方の片割れ(Half of It)を求めているようだった。自分の思想を互いに共感し得る人がいるなんて、なんて素敵だろう。

エリーの男っぽい低い声が心地よかった。ヒロインでありヒーローという不思議な役どころだけれど、とても魅力的だと思った。
本当に好きだからこそアスターへの思いを言葉で形容することができないエリーのもどかしさが伝わってくるレストランのシーンは特にお気に入り。

町で唯一の中国人として肩身の狭い思いをしてきた父と映画やタコス・ソーセージで交流するところはほっこりした。

最初は単純なバカという感じのポールも、アスターの気をひこうとしている間に、いつのまにかエリーが好きになっていく過程とその後の三角関係の波紋に青春の甘酸っぱさが凝縮されていた。


偉大な先人の言葉を借りてもしっくり表現できない「愛とは」という問いに対し、他人との関わりの中である答えにたどり着く若者たち。
しかし、それは1つの形であって個人の中でも関係性や時の流れと共に変容していくもの。
まだ半分しか(Half of It)知らないまま答えを出すのは勿体ない。面白いのはこれから、というダブルミーニングが深い。

“陳腐”だけど最高に良いラストシーンが鑑賞後、爽わやかな気分にさせてくれる。
Aoi

Aoi