すごく良かった。ネトフリらしいテンポの良さと、キャラクターの心の機微をとらえる小説的な繊細さが共存していてハートを射抜かれた。
エリーが「愛とは…」と言葉を絞り出すシーンが良かった。教養深く、ポールの代筆なら何でも答えられたエリーが、自分のこととなると言葉に詰まる。
「愛とは努力すること。卑怯で、大胆だ」。泥臭くても「愛のためなら」と手を伸ばそうとするポールの愚直さが、エリーの心を変えてきたのだと感じてぐっときた。
アスターにキスするシーンもまさに”大胆”で良かったな。ラストの列車のシーンも分かっちゃいたけど感動した。
冒頭で語られる通り、これはラブストーリーではなく、望みが叶う物語でもない。それでも、これは紛れもなく「愛」についての物語だし、2人は小さな町の小さな自分の世界を確実に変えた。
一方でアスターの描かれ方が2人に比べ薄っぺらく感じた。行動が受け身で、エリーのように教養にすがる背景もにじんでこないし、なんで楽しくなさそうなのに不良とつるむのかよく分からない。
技法的に見ても面白かった。Nオリジナルはどれもそうだけど、各シークエンスがほんとに短くて、2分を超える場面がほとんどない。そのうえ、チャイムの音やオーブンの音、細かな生活音が場面をうまくつないで見飽きない。
従来の映画ならこういう題材を描く場合、もっと静かで淡々とした描き方をされてきたと思う。スマホで映画を見る時代に合わせて映画のあり方もがらっと変わってきたのだろうか。
Nオリジナルに限らず、視聴者はYoutubeに慣れて、長い映像を見るのに疲れ安くなってきた。どんな映画も1秒先が気になるようなつくりを意識してきた気がする。
それはそれで面白いからいいけれど、この映画に限っては深みのある言葉のやりとりが印象的なので、従来的な2時間の余韻たっぷりバージョンも見てみたかった。