馮美梅

リスタートはただいまのあとでの馮美梅のレビュー・感想・評価

3.8
都会に行くともっと楽しい何かが待っているかもしれないと思って7年…仕事で上司ともめて結局、田舎に戻ってきた光臣。久しぶりに帰ってきた地元。感傷に浸る間もなく1人の青年が人懐っこく声をかけ、光臣はすっかり彼のペースに巻き込まれる。

彼の名は大和。光臣が東京へ行くのと入れ違いに知り合いの熊井のおじさんの養子となってやってきた。

実家の家具屋を継ぐと言う光臣に父はいい加減な気持ちのやつに継がせられないと言われ、気が付けば大和のペースに巻き込まれ熊井の畑の手伝いをすることに。最初は仕事も適当、仕事帰りの緩やかな坂道も自転車を漕ぐことすらできなかった光臣が、手伝いが続いていくと徐々にその道もちゃんとペダルを漕いで走れるほどになり、仕事もそれなりに楽しくなってくる。

大和との関係もあんだけうざかったのになんだか心地よくなってくる。
大和はいつもニコニコ、オープンマインドな感じだけど、大和の高校の同級生上田に言わせれば「あいつは突然シャッターを下ろす」

気が付けば光臣は大和に対して単なる友人以上の感情を抱くようになる。
大和と同じ施設で育った涼子に対して嫉妬をしたり、大和も光臣が自分に対してどんな気持ちなのかわからず、自分自身も戸惑う。

しかし、何が凄いって、大和を演じている竜星涼さんの演技の幅の広さ。
雰囲気もそれぞれの作品によって本当に変わる。かっこいい役はとことんかっこよく、悪い役は悪く、謎の役は謎を持ち、純粋な役は本当に純粋な表情を魅せる。

今回の大和も赤ちゃんの時に親に捨てられ施設で育ち、人に愛されるということを知らず、慣れず、戸惑うがゆえに、自分の精神を安定させるため(守るため)いつもニコニコ明るくしている。

ぎっくり腰になってしまった父の代わりに修理した箪笥を大和と届けに行くシーン。お客さんから「この子(孫娘)の嫁入りに持たせようと思ってね。この箪笥はあなた(光臣)のおじいちゃんが作って、それをお父さんが修理してくれた。次はあなたの番ね(みたいな感じの事を言う)」と言われ、幼き頃の記憶がふっと蘇る。

小さい頃、自分は父の仕事をしてる姿を見るのが好きだったし、いつかは自分も父のような家具職人になると思っていたのに、いつからそれが変わってしまったのか…

同じころ、大和も決意をもって東京へ向かう。
光臣と2人、東京の夜…そしてあの時のキスの意味を聞く大和に、「好きなんだ」と言っちゃう光臣。単に男性が好きということではなく、男女とかそんな単純な恋愛とかではない、お互いが何より代えがたい存在として欠かせない相手だということを改めて実感出来た瞬間、なんだかこちらも心温まった。

信州の山や畑や田んぼの風景がとても綺麗で、その何もないところが嫌だった光臣が大和を好きになる様に変化していく心模様も丁寧に描かれていると思った。
馮美梅

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