いろどり

タゴール・ソングスのいろどりのレビュー・感想・評価

タゴール・ソングス(2019年製作の映画)
3.7
行ける距離での上映会がなくなってしまい観に行かなかったことをずっと後悔していた映画。今回、Peter Barakanʼs Music Film Festival2022にて、ピーター・バラカンさん、監督の佐々木美佳さんの対談ありで鑑賞できた。

1913年、非西欧圏で初のノーベル文学賞を受賞した詩人タゴール。哲学的な詩の葉を音色に乗せた"タゴールソング"はベンガル地方の伝統的な文化として今もベンガル人の心に生き続けている。

タゴールはインドの詩人なので、インド人に親しまれているとばかり思っていたら、インド、バングラデシュ(ベンガル地方)のベンガル語話者の間で大事にされていて、インド人にはあまり知られていないとのこと。

若干26歳の監督が初の映画撮影のインドのコルカタやバングラデシュのダッカで、行き当たりばったりで出会ったタゴールを愛する人々を追ったドキュメンタリー。見やすくまとまっていて良かった。

シタールを奏でながら歌い続け血肉となった自身のタゴールソングを、たくさんの弟子の中で最後に出会った若い女性に託すおじいさん、タゴールをリスペクトするラッパー、ミソジニーの強いインドの因習を変えたいエネルギッシュな大学生など、ベーシックな受け継ぎだけではなく現代にアップデートした伝統の継承は、インドやバングラデシュという若い国の発展の可能性を感じさせた。

歌とタゴールソングは別物とのこと。
世の中の理や普遍的な精神、哲学的思想を芸術的感性に乗せたタゴールはベンガルの人たちのアイデンティティといっても良さそう。その歌を歌うというのは1つの思想であり、1つのジャンルなのかもしれない。

完全に読み取ることは難しいタゴールの詩だけど、歌にするとぐっと近づきやすくなり、歌のちからの偉大さを感じた。歌を聞いてもベンガル語わからないから詩集に挑戦してみようかな。
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