デパルマ

TITANE/チタンのデパルマのレビュー・感想・評価

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
4.0
痛いし怖いし心臓に悪いし意味わからん。生にしがみつく男と胎児の異物感に苦しむ女が迎えるラストに心を掻き乱される。ダンサーの女が男に成り代わりやがては人間を超越したような存在に変容していく様がおぞましくも神秘的。キリストが女性だったらって話かもしれないし、出産時の得体の知れない心身の変化を描いたのかもしれないけど、にして家父長的な父親(神?)のケアに着地してしまったのが個人的に納得いかない。傷を抱えた親子のchosen family的な物語なのに、前半の主人公家族の関係があんまり見えないし、ラストカットのおかげで結果的に全体が旧来的な家父長制を肯定するような内容に見えるのが個人的にう〜〜んとなる。それってすっごい保守的な男性像を神のように崇めることになってない?っていう。ヴァンサンがステロイド注射を辞める描写、つまり神あるいは有害な男らしさから降りる描写が必要だったのではないか。そもそも根本的に成長してない彼にストーリー上の救いを与えられても、素直に心温まれないよ。アレクシアはダンサー、ヴァンサンは消防士、どちらも肉体を武器に仕事をしているが、アレクシアは妊娠によりダンサーではいられなくなり、ヴァンサンは老化により消防士としての限界を感じている。肉体の変化を恨めしく思う二人は、サラシを巻いたり、ステロイドを打って抗おうとする。そして最後はその変化を二人で乗り越えるつーことで、えーっと、全然分からない。混乱しかない。カオスで多様なモチーフを息つく間もなく観客に見せ続け、価値観や常識を揺さぶって終了!みたいな作品なのだろうか。まんまと揺さぶられたし、全然どういう映画なのか掴めないままだけど、すごく面白かった。かなり好き。
デパルマ

デパルマ