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ハウス・イン・ザ・フィールズのtaominicocoのレビュー・感想・評価

4.0
オンライン試写にて、お先に観せていただきました。

モロッコ・アトラス山脈のアマズィーグの人々を映したドキュメンタリー。
(アマズィーグ人はベルベル人の名称の方が馴染みがあるかもしれませんが、蔑称なのだそうです。勉強になりました)

ポスターのビジュアルがやけに洒落ていて、アマズィーグの姉妹の青春物語かと思ったら、とんでもなかった。重くはないけど、深く考えさせられる作品でした。


瞳の美しい少女ハディージャと姉のファーティマ 。
ある日、姉のファーティマに兄の知り合いとの結婚話が舞い込み・・・。結婚するために学校を辞めざるをえなくなったファーティマは、泣いていた。
心で嫌だと叫んでいるのが、痛いほど伝わってきました。

テレビやらの情報で、他の国の同世代の子たちは自由に夢をみて叶えていること、自分の意思を自由に伝えられることを知っているんです。だけど、結婚するのは自分の「義務」だとも思っていて・・・。
現代と伝統の間で揺れ動く、姉妹の気持ちが切なく伝わってきます。

作品中で妹のハディージャが語っていましたが、モロッコでは2004年に家族法を改正され、男女同権の条項が盛り込まれ たのだとか。

おお・・・・日本も男女格差120位とか酷いらしいけど、モロッコでは同権になったのが2000年以降とは・・・驚きすぎて言葉がない。

女性の立場を考えると変わってほしいと思うけれど、姉のファーティマの婚礼の儀はそれはそれは美しくて・・・
変わってほしくない伝統もあるなぁと、複雑な気持ちになりました。

初めて耳にするアマズィーグ語の響きは心地良く、モロッコの大地はどこまでも広くて美しい。ゆったりとした雰囲気の作品なので、
好き嫌いが分かれるかもしれません。


監督兼撮影のタラ・ハディド監督は、7年にも渡りアマズィーグの人々と生活をともにしたのだとか。7年の月日の中で彼らと同化し、溶け合っていたのは映像から十分に伝わってきます。

そして、地域の人の手のアップが、度々、映されていたのが印象的でした。
しわくしゃで太い指先には、洗っても取り去れない土塊がついていて・・・。
アマズィーグの働き者たちの手と自分の手は、なぜこんなに違うか。
申し訳ないような、後ろめたいような…なぜだか、そんな感情がわいてきました。
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