グラフィックノベルを原作としたNetflix独占配信映画。
いわゆるスーパーヒーローモノに分類されるタイプの映画なのだけど、その範疇を超越した骨太で洗練された素晴らしいアクション映画になっている。
プロット自体はMCU『エターナルズ』に近似している点も多いのだけれど、神話的な視点の強かった『エターナルズ』よりもミニマルな舞台設計となっており、軸足は紛れも無くファンタジーなのにそう感じさせない意匠になっているのが特徴的。
比べる必要はまったくないけれど、個人的にはよりタイトでスリリングな本作の方がずっと好みだった。
『マッドマックス 怒りのデスロード』と『アトミック・ブロンド』という傑作でアクションスターとしての地位を確立したシャーリーズ・セロンが本作でも圧巻のアクションを披露している。
特にダイナミックかつしなやかな格闘シーンの演出には『アトミック・ブロンド』で組んだ87eleven Action Designのデヴィッド・リーチからの影響が大きいのだろう。
オールド・ガードは不死の戦闘部隊という設定ゆえに、奇抜で大胆な殺陣が繰り広げられるのでドンパチが続いても飽きさせない面白さがあるのが特徴的。
そして観客は「彼らは死なない」という安心感を持ちながら目の前のアクションを堪能できるのだけど、ある瞬間から急激なギアチェンジが施されることで突如として緊迫感が張り詰める仕掛けも素晴らしかった。
シャーリーズ・セロンの華麗なアクションを観るだけでも十分楽しめるけれど、それぞれの正義や信念が交錯しながら二転三転していくストーリーはサスペンスフルで見応えがあるうえに、オールド・ガードのメンバーひとりひとりの心情や関係性を掘り下げているのでヒューマンドラマとしても成立している。
シンプルながらも緻密に組み立てられた巧妙な脚本美に唸る。
『エターナルズ』に近似している点として「多様性」が本作でも一つ肝になっているわけで、それはアメリカに横たわる社会情勢と密接にリンクした設計になるのが極めて現代的である。
続編を仄めかす示唆的なラストも含め、この先の物語を観たて仕方がない。傑作!