m

オールド・ガードのmのレビュー・感想・評価

オールド・ガード(2020年製作の映画)
4.8
THEマンガな設定や物語を、超一流俳優陣のガチの熱演と、短い場面で的確に感情を描写するジーナ・プリンス=バイスウッド監督の優れた演出力で強引に捻じ伏せて、やたらエモーショナルで愉しいアクション快作が誕生。予想とは違う方向性の面白さが漲っていて驚いた。

この映画の最大の特色は『不老不死』というマンガ的設定と絡めて同性同士の間でスパークする熱くて巨大な感情が度々描かれる事。特に映画史上に残る熱い愛の言葉と共に最高のキスシーンを繰り広げる男性カップル・ジョー&ニッキーが印象に残る(この2人のバックボーンもやたら凄くてロマンチック)。このシーンでのジョーの愛の言葉は、彼らの事を『なんだお前の彼氏か?www』と嘲笑してくる無粋な敵に対して向けられたものであるのも良い。何しろ彼らの愛はもう数百年もの間続いているのだ。彼らのこのキスシーンには何か凄いエモーションが漲っていて、このシーンだけでも必見。
ジョー&ニッキーだけでなく女性同士の間にも熱くて巨大なエモーションがあって、シャーリーズ・セロン扮する主人公アンディとかつてのパートナー・クインの2人の回想シーンは、短い時間の中で2人の間だけの特別な運命的感情を感じさせる。クイン役がベロニカ・グゥことベトナム映画界でアクション女優として鳴らしたゴ・タイン・バン姐さんというのがナイス・キャスティング。姐さんの強い目力が存分に活かされている。てか姐さん、アクション映画引退って言ってたのにまた何気にアクションしてるじゃないですか!?ありがとうございます!
アンディと新入りの女性兵士ナイルの間にも師弟関係とも違う不思議な関係性が芽生えつつあるし、1シーンだけ突然物語に絡む薬局の女性店員さんとアンディのシーンにも何やら熱いエモーションが漲っている。
こうした同性同士の間の熱くて巨大なエモーションが、この映画を他のアメコミ映画と一線を画するものにしている。

‪黒髪ショートカットのシャーリーズ・セロン姐さんは佇まいもアクションも極めてカッコ良い。殺生を重ねる事への感情やナイルへの感情も見事に表情で見せて流石です。同じようなヘアスタイルの主演アクション作「イーオン・フラックス」の失敗の無念がついに消えました。
もう一人の主人公とも言えるナイル役のキキ・レインも主演作「ビール・ストリートの恋人たち」の時とは正反対のパワフルな役柄を好演。
先述のジョー&ニッキーのカップルも素晴らしい。
主人公の部隊の中で唯一感情が一方通行なブッカー役のマティアス・スーナールツはマジで『こういうマティアスさんが見たいです』というファンの願望をそのまま実体化したようなファン垂涎の役柄で最高です。男臭いけど心が弱くて、切なくてセクシー。ありがとうございます!


近代的な銃器だけでなく古の剣や謎の中二的カッコ良さのある戦斧も用いたアクションにはプロフェッショナルな無駄のなさと厨二的カッコよさの両方があって愉しい。特にセロン姐さんのアクションは舞踏のような滑らかな動きと無骨な殺意が両立していてお見事です。無駄にカットを割ったり寄ったりしない撮影の見易さも良い。


唯一玉に瑕なのはやたらチャラい挿入歌が流れるけどそれがあまり作品とマッチしていない所で、ただそのダサさもなんだか愛せてしまう。
完全にマーベル映画みたいなエンディングも愛せる。マジで即刻続編製作希望‬です。
m

m