「ザ・ファイブ・ブラッズ」
スパイク・リー監督によるベトナム戦争の黒人帰還兵を描いた社会派戦争ドラマ。
ベトナム戦争から生存した黒人帰還兵のおじいちゃんたちが戦地に残してきた金塊の山と戦死したチームのリーダーを弔うために再びベトナムの密林へと足を入れるという話。
この戦死したチームのリーダーを演じるのが、先日若くして結腸ガンでこの世を去ったチャドウィック・ボーズマンということで、彼が登場する度に泣けて仕方がなかったです。ワカンダ国王のブラックパンサー、ジャッキー・ロビンソン、ジェームズ・ブラウンなどカリスマ性あふれる人物を演じさせたらピカイチ。ほんとにハマっています。
またおじいちゃんチームのなかではPTSDに苦しむデルロイ・リンドーが素晴らしかったです。一番暴力的で気難しい人物なのですが、息子との関係に悩んだり、戦地の悪夢に苦しむなど実に人間臭い、感情移入できる役どころでした。今年のアカデミー賞の有力候補として名が挙がってますが、それも納得の名演でした。
サブリミナル的にキング牧師やマルコムX 、トランプ大統領の発言やベトナムの数々の悲惨な現場の映像がはさみこまれ、情報量が多く、かつ長尺なので結構ついていくのが大変です。(特に序盤) で、まさに今のBLACK LIVES MATTER問題にもつなげていくあたりさすがはスパイク・リーだな感じました。
正直、「黒人は偉くて、白人は酷い」という安易なメッセージだったら嫌だなと思っていたのですが、そこはちゃんとかわされていて、フランス人やベトナム人も物語に登場することで、「白人だろうが、黒人だろうが、アジア系だろうが差別や迫害はダメ」という感じになってました。とにかくPTSDや地雷の問題など「戦争を経験すると、一生ついてまわる」という悲惨さを伝えているのは真摯だなと思いました。なかなかハードな描写があるので、注意は必要です。
序盤がちょっとだらだらに感じるし、メッセージが重たい作品ではありますが、まさに今観る価値がある作品だと思います。最後に名演を見せてくれたチャドウィック・ボーズマン、ありがとう。