ワルキューリ

グローリーのワルキューリのレビュー・感想・評価

グローリー(1989年製作の映画)
4.0
第二次大戦中、日系人によって編成された第442連隊。彼らは必死に戦い、傷つき、多大な戦果を収め…それでもなお完全には認められなかった。

本作は南北戦争中に編成された黒人達によるマサチューセッツ第54連隊がテーマだけど、戦争やアメリカが抱える矛盾という意味では共通するものを感じる。
まずは奴隷から逃げた先で受ける黒人への差別。戦いたくともろくに装備を与えられず、自分でどうにかしようとすれば軍規違反で処罰を受ける。
いざ戦場へ!と勇んでみても任されるのは肉体労働、そして直視せざるを得ない自分たちがたどるかもしれないペルソナ…

この作品の中では敵の顔が見える距離での撃ち合い、そして接近戦がメインにもかかわらず、相手の顔はほとんど映さない。その代わり味方であるはずの側から受ける仕打ちをはねのける心の強さと仲間たちの絆こそが主軸であり、今に続く黒人差別への抗いやオバマ・トランプ政権下で顕在化した分断に対する問いかけにもなっている。

54連隊はもちろん祖国のために戦ってはいるが、戦う内に目覚めるのは愛国心ではなく、ともに戦う仲間たちとの連帯感だった。それが爆発する要塞への突撃は胸が熱くなる一方、結局は人間同士の殺し殺されでしかないという矛盾もぬぐいきれない…

そういった複雑な背景を表現するキャストの心中は想像するしかないが、それぞれ思うものはあったはず。特にデンゼル・ワシントンのトリップ二等兵がショーから戦う意味を問われたときの憑き物が落ちたような変化は思わずこちらも息を呑んだ。