面白かった。鑑賞後に心に残るものは少ないけど。韓国の『パラサイト』が好きな人はこれも気に入りそう。友達や恋人との暇つぶし用として優秀。
序盤は、いつもどおりの嘘つきな演技（タオでございます感を陽気に発しがちで、憑依はゼッタイ目指さない）の主演女優を筆頭に、子役に至るまで全役者がＮＨＫ朝ドラみたいに “安心感” ばかりを提供してくれた。（☜褒めてない。。）
そんな前半のヤマは、キスんとこのタオの美しさ。メイクさんや照明さんや顔面さん（やキャメラさん）が大活躍しての突然の凄艶さに「え？」と感動しちゃったなぁ。
さて、中盤からの猟奇サイコホラーな流れ！ 情を稀にしか揺さぶってこないけど、勢いの良さに鷲摑まれた！
ふだん私は、映画に飽きてる時に砂浜シーンを見ると「乗れそうか（良い波か）」を想うという癖があるが、本作で海が何回出てきても私はドラマにだけ集中できてた。飽きないってのはイイコトだ。
でも、「面白がらせよう！ 面白がらせよう！」っていう張り切りだけで終わっちゃった感じ。面白がらせ終えた結果として何を私たちの心に残してくれるつもりだったんだろう。全然わかんない。ストーリーだけがあって、じつはテーマがないのかも。
絵画というモチーフを猟奇性とともにもっと爆発させてほしかった気も。
地力あるタオは、いつもどおりか後半にきっちり本気を出してきた。タオ映画の中でも本作はタオ的に成功してるほう。
子役は大熱演だけど、韓国映画平均ほどには巧くない。
（スター頼みでない俳優部全体の演技力の高さと人間ドロドロ描写の容赦なさを誇る）韓国がこれをリメイクしたら、そして社会考察っぽさとアート味を小ずるくふりかければ、『パラサイト』っぽくなる。私は『パラサイト』よりもこっちのが好きだけどね。
あと、開業医が必ず大金持ち、って考えちゃう人が多いみたいだから一応、書いとく。私の親戚には医者が多いけど、みんなわりかし慎ましい生活してるよ。クリニック開く時にうちに借金しに来た人もいる。医学部時代に家庭崩壊寸前ぐらいに学費つぎ込んでて、そういう頃に「兄弟姉妹の誰と誰の間に不公平があった」とかでその後ずっと骨肉の争い（裁判沙汰とか）になるのも多い。医者のくせに老後の親に毎月たった数万円っきりを渡すのを渋る息子もいる。これ本当。邦画はやたらと医者を上流階級として描きたがるけど。
てことで、面白い映画だった。
