このレビューはネタバレを含みます
『哀愁しんでれら』なんてタイトルだから、シンデレラのように王子様的な男に嫁いだら全然うまく行かずに不幸になっていく悲劇……位のものだと思っていたら、クライマックスには震えが止まらず、見終わった頃には客席で放心状態、周りもどよめいていた。
邦画でここまで異様な雰囲気になったのはいつ以来だろうか。
何が起きるかは絶対にネタバレできない。
いつも演技に力が入って若干空回り感があった土屋太鳳が、その生真面目な空回り感含めて役にハマっていたこと、田中圭が爽やかイメージを覆すモラ夫変人を怪演していたこと、娘役のCOCOが可愛いのに人をいらつかせもする絶妙な表情含め見事な演技をしていたことは語っておきたい。
美術、撮影も美意識が高く、清潔すぎて逆に人を圧迫する豪邸のセット、現実味のない海に面したロケーション含め、不自然にロマンチックな出会いから怒涛の暗黒家庭ドラマになだれ込んでいって目が離せなかった。
映画としてのルックは中島哲也っぽく、前半は『嫌われ松子の一生』、後半は『告白』といったテイストだろうか。
終盤の衝撃の展開は正直『告白』を超えていると思ったが、それにつながるストーリーの流れは正直強引だし、『哀愁しんでれら』というタイトルは「シンデレラ」のストーリーを悲惨なオチにしたという意味ではあっているけど「哀愁」という部分が、ストーリーの顛末が哀愁どころではないので、ちょっと違和感はあった。
しかし、この豪華キャストのシネコン系邦画であると考えれば、こんなに攻めた内容なのは驚異的と言えるし、必見の作品です。