視聴者自らの心理の変遷を自己観察する映画。
序盤は白人警官を欺く黒人連中の社会実験とやらにむかむか腹が立つ。いくら大学に認められている実験プログラムであっても、銀行強盗をしたという厳然たる事実は金を返したからといって覆るわけではなく、重罪であることに変わりないだろう。
まぁしかし、そこは本当にそんな実験が許される場合もありうると認めないと話が進展しないので目をつぶるとする。
ところが後半、黒人側の作戦に不測の事態が生じてしまうとこっちの心理も逆転することになる。
一転して黒人不利な状況になってしまったわけだが、そうなると白人警官側が俄然有利になり、黒人も憐れみを乞う状況にはこちらも同情させられてしまう。
要は居丈高にマウントを取ろうとする人間は白人であれ黒人であれ、第三者には不愉快にしか映らず、嫌悪の対象でしかないということですね。
映画はその他にも黒人側のそもそもの動機や、白人警官側の周辺の人間模様など徐々に種明かししていく構成となっており、それはこちらにとっては決して気持ちいい見せられ方ではないけれど、技巧的にはありかなと思えなくもない。
何れにしろ映画の帰結的には「善なる目的であっても悪なる行為をする者はどんな形であれ罰せられるであろう」という理解でいいのかもしれない。