MasaichiYaguchi

アオラレのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

アオラレ(2020年製作の映画)
3.3
冒頭の〝前説〟で映画の主旨や背景が言い尽くされていると思うが、大きな社会問題となっている「煽り運転」を題材に繰り広げられるドライビング・スリラーである本作と似た設定と展開の作品で「ロード・インフェルノ」がある。
「アオラレ」はラッセル・クロウ演じる家庭不和でボロボロとなったサイコパス中年男が主人公だが、「ロード・インフェルノ」では防護服を着たサイコパスじいさんで、両者共に映画の冒頭から〝ヤバさ〟を強烈に炸裂させる。
そして、これらの危険人物の被害者となるキャラクターが誰でもやってしまいがちな行為を発端に惨劇が始まるのも同様で、その背景に家庭不和があるというのも共通だ。
確かに両作品共に加害者は執念深くて異常以外の何者でもないが、被害者側にも全く落ち度が無い訳ではない。
「謝罪のタイミングは大事」とか「プライドよりもマナー」とか教訓となることは沢山あるし、そもそも「君子危うきに近寄らず」だと思う。
ドライビング・スリラーの代表作と言えばスティーヴン・スピルバーグ監督の「激突!」や、今年デジタルリマスター版がリバイバル公開された、「ブレードランナー」のルトガー・ハウアーが謎の殺人ヒッチハイカーを怪演して大ヒットを記録した「ヒッチャー」があるが、「アオラレ」にしろ「ロード・インフェルノ」にしろ、これらの名作とは一線を画したストレス社会を背景とした今時の作品だと思う。